[ 2014年2月15日9時25分

 紙面から ]笑顔で演技する高橋(撮影・井上学)<ソチ五輪:フィギュアスケート>◇14日◇男子フリー

 フィギュアスケートの高橋大輔(27=関大大学院)が、現役を続行する可能性が出てきた。2大会連続のメダルを狙い、ショートプログラム(SP)4位から巻き返しに出たが、6位にとどまった。昨年11月26日に痛めた右膝の状態が万全ではなく、不完全燃焼の五輪となり、関係者は「やめないかもしれない」と話した。集大成の五輪を終えて、現役続行か、休養を挟んでの復帰が選択肢として浮上した。

 高橋が、来季以降もリンクに立つ可能性が出てきた。ソチ五輪が行われる今季を集大成と位置付け、9日のソチ入りの際には「五輪は最後」と話している。31歳で迎える18年平昌五輪への挑戦には否定的だが、一方で関係者は今季限りでの引退について「やめないかもしれない」と口にした。

 3度目の五輪は右膝を痛めて完全燃焼とはならなかった。昨年11月26日に3回転ルッツの練習中に右膝を痛めた。膝が伸びた状態で両足着氷し、体重が右膝の内側にかかり、骨と骨がぶつかった。患部は脛骨(けいこつ)の頂点付近で、08年に手術した場所の近くだった。

 主治医である社会保険京都病院の原邦夫医師(58)は「陥没骨折の1歩手前だった。骨の外側はつぶれなかったが、スポンジのようになっている骨の内側が出血した。本来1カ月間は運動禁止という負傷」と振り返る。そのけがを押して昨年12月21日から全日本選手権に出場。ソチ切符は得たが、回復は遅れた。

 ソチ入り前の1月18日、右膝にたまった水を抜き、薄くなった軟骨を補助するため、関節の動きをなめらかにするヒアルロン酸を注入した。もともとトップ選手が3カ月間は使うスケート靴を1カ月でくたくたにするほど練習の虫だが、モスクワの直前合宿も「追い込むというより調整」と練習量は制限された。SPでは冒頭の4回転トーループに失敗して4位。ソチ入り後は失敗が続いたが、日本代表の誇りにかけて挑んだ。「今日は100%の演技ができなくて悔しい」と口にした。

 昨年7月には自身の去就について「(今季が)終わってみて、ゆっくり考えたい。やり残しがなければやめるし、やり残しがあれば続けるかも」と話した。8歳下のライバル羽生について、関係者には「僕はこれからも伸びる。進歩できる。4回転さえ普通に跳んだら、結弦(羽生)に負けることはない」と、第一人者としての自負を明かしている。

 本人が望めば現役を続行できる環境はある。06年に総工費8億円をかけて通年型リンクを建設した関大の森本靖一郎顧問(81)は「スケート自体はやめないと思う。(ロシアの)プルシェンコのように、少し休んでまた戻ってきてもいい。彼はうちの永久シード選手だ」と言う。

 10年バンクーバー五輪銅から休養をとらずにフィギュア界をけん引。しかし五輪直前のけがで100%のパフォーマンスはできなかった。アスリートの本能から、現役続行もしくは休養を挟んでの復帰を選ぶ可能性がある。