ダイヤモンドリーグ実施32種目中16種目の最終戦で、今大会の優勝者が年間チャンピオンに決定する(前戦のチューリッヒ大会で16種目は決定済み)。勝負の行方が最も注目されるのは男子棒高跳びで、多士済々のメンバーが年間チャンピオンを競う。記録的には7月に女子3000メートル障害で世界記録を出したベアトリス・チェプコエチ(27=ケニア)に、再度の世界記録更新の期待がかかる。男子走り高跳びの戸辺直人(26=つくばツインピークスには上位争いが期待できる。

日本選手の最終戦出場は、年間得点上位者が優先される現システムになってからは戸辺が初めて。18日のバーミンガム大会で最終戦進出を決めた際、「今季の本番はここからの2連戦(アジア大会と最終戦)。しっかりと結果を残したい」と話した。

しかし27日のアジア大会は2メートル24で銅メダルと、目標としていた金メダルを取ることができなかった。その分も、最終戦にかける思いは強い。

最終戦のメンバーは、残念ながら世界のトップクラスが揃わなかった。今季のダイヤモンドリーグポイント1位のダニル・リセンコ(21=個人資格)は、暫定的に出場資格停止処分を受けている。2位のムタス・エッサ・バルシム(27=カタール)は7月にケガをして試合に出られない。3位のマフド・エディン・ガザル(31=シリア)、6位の王宇(27=中国)のアジア大会出場組も回避した。

優勝候補はバーミンガム大会で勝ったブランドン・スターク(24=豪州)だろう。その8日後には2メートル36のオセアニア記録も樹立した。8月のヨーロッパ選手権を取ったマテウス・プルジビルコ(26=ドイツ)も2メートル35と自己記録を伸ばしている。

戸辺も7月には2メートル32の日本歴代2位、海外日本人最高をイタリアの試合で跳んでいる。混戦になれば3位以内の可能性は十分ある。

男子棒高跳びは対照的に超豪華メンバーとなった。

ダイヤモンドリーグポイント1位のサム・ケンドリクス(25=米国)は、昨年のロンドン世界陸上金メダリストで自己記録は6メートル00。ポイント2位のショーネシー・バーバー(24=カナダ)は2015年の北京世界陸上金メダリストで、自己記録はやはり6メートル00。

ポイント3位はルノー・ラビレニ(31=フランス)で6メートル16の世界記録保持者。金メダルは2012年ロンドン五輪だけだが、その後の五輪&世界陸上すべてで3位以内に入っている。

そして今、最も注目を集めるのがポイント4位のアルマン・デュプランティス(18=スウェーデン)だ。U20の選手ながら8月のヨーロッパ選手権に優勝。そのときの記録が6メートル05の世界歴代3位タイ(ラビレニの世界記録が室内なので、屋外では世界歴代2位タイ)。

棒高跳びはデュプランティス時代に突入するのか、歴代の金メダリストたちがそれを阻止するのか。大注目の一戦となる。

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、一昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。

昨年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、来年の世界陸上への出場権が得られる。

出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。