パンパシフィック水泳で、新しい試みがスタートしている。日本水連のアスリート委員会が、大会実行委員会とコラボして、会場内でラジオ解説を行っている。決勝の時間帯にオリンピアンらが分かりやすく、見どころを説明。萩原智子アスリート委員長(38)は「観客の方々にファンサービスをするためです。いろんな競技を見ると『ファンの方にわかりやすい』ということを大事にされている。水泳の普及という意味でも『何かやりたいな』と思っていました」と話した。

 きっかけは、知人のひと言だった。「水泳はテレビで見るほうが分かりやすい」。萩原委員長は「テレビも魅力的ですが、会場に足を運んでもらって、生の魅力も見てほしい。きていただいた方に分かりやすい、親切な解説を心がけています」。ゲストはほぼボランティアで協力している。

 日本水連のアスリート委員会は、今春のアーティステックスイミング(AS)ジャパンオープンで、フィギュアスケート女子の宮原知子を会場のゲストに招いた例もある。水泳は伝統があり、人気も高いが、現状に甘んじることなく、ファン層の拡大に向けて、努力を続けている。

 パンパシでは、会場の東京辰巳国際水泳場に貸し出し用ラジオ200台を準備した。大会第1日の9日は予備の3台も含めて203台が貸し出されて、好評だ。萩原委員長は「自分のラジオでも聞けますので、ぜひチャンネルを合わせてください」と呼びかける。

 パンパシは16年ぶりの日本開催。「お客さんが多くて、いつもの雰囲気と全然違う。声援が力になる」と話す選手が多い。女子200メートル自由形で銀メダルを獲得した池江も「観客の声援がすごくてうれしくて、これを東京(五輪)でもやりたい」と声を弾ませた。アスリート委員会の試みがさらなる集客につながれば、選手にとっても大きな力になる。【益田一弘】

 ◆益田一弘(ますだ・かずひろ)広島市出身、00年入社の42歳。五輪は14年ソチでフィギュアスケート、16年リオで陸上、18年平昌でカーリングなどを取材。16年11月から水泳担当。