<世界柔道>◇24日◇女子57キロ級◇パリ・ベルシー体育館

 優勝が決まった瞬間、佐藤愛子(27=了徳寺学園職)は号泣した。あふれんばかりの涙を流し、何度も顔を覆った。「ケガして代表を外れて、長かったし、痛かったなぁと思うと、涙が出てきました」。苦しい時間を乗り越えての復活優勝。実感がこもっていた。

 出場した北京五輪の敗者復活戦で右ひざの前十字靱帯(じんたい)を断裂。そこから苦闘の日々だった。約1年間のリハビリ生活を経て、実業団大会で優勝するなどコツコツと権利を獲得し、代表に返り咲いた。準決勝では昨年女王の松本薫に投げ技からの合わせ技一本で、初めて勝った。決勝では背負い投げを豪快に決めた。

 初戦で負ければ即引退と決めていた今大会。「うまくタイミングが間に合った。ここで何とかしないとロンドンはないと思っていた。ここからが勝負」。閉ざされかけていた五輪への扉は今、少しずつ開き始めた。