仙台89ERSの「顔」、ポイントガード(PG)志村雄彦(35)の地元で最後の試合が終わった。青森ワッツに86-91で惜敗し、ホーム最終戦を白星で飾ることはできなかった。今季限りで現役を引退する志村は3得点だったが、司令塔としてチーム最多のアシスト8本に成功。約28分間、コートに立ち続け、チームメートを鼓舞した。試合後のあいさつでは、今季最多3765人のブースターに感謝の言葉を並べ、涙を拭った。
バスケット人生の原点となったコートで、志村は少し感傷的になっていた。「もうここには戻ってこられないんだな」。PGとしての見せ場は第4クオーター(Q)。スティールでボールを奪うと、ロングパスでアンジェロ・チョル(24)のダンクにつなげ、会場に割れるような大歓声を巻き起こした。試合後はブースターから「雄彦よくやった!」というねぎらいの言葉が飛び交い、地元仙台が生んだ功労者の「引退試合」を惜しんだ。
思い入れのあるカメイアリーナ仙台が、今季ホーム戦のラストコートになった。「小学生の時から何回も試合をしてきた場所。最後はゼビオアリーナじゃなくて、ここで良かったなと。最初にミニバスやった時、レイアップを決めたら、相手のゴールだったことを今でも覚えている」。そんな少年が35歳になり、プロとしての責任を背負ってコートを駆け回った。
会場は引退セレモニーがあった4月29日の福島戦をしのぐ、今季最多3765人のブースターでほぼ満員だった。仙台高時代の恩師で、明成監督の佐藤久夫氏(68)も駆けつけた。連戦による疲れからか、2点シュートは10本打って成功1本、3点シュートは4本で成功なしに終わったが、武器であるアシスト8本を通し、戦う姿勢を最後まで緩めなかった。
試合後はコートで涙のあいさつ。ホーム3連敗の悔しさ、引退への思い、ブースターへの感謝が交ざり合った。
志村 勝ちたかった。皆さんと笑顔で終わりたかったです。シュートも入らないし、ボロボロでした。でも、この10年間は誇り。本当にありがとうございました。
仙台では08年から10季プレー。160センチの小柄な体で外国人選手に立ち向かう姿は、見る人の胸を熱くさせた。来季からはフロント入りし、チーム強化の後方支援に回る。「アリーナは人が入って初めて完成するんだなと感じた。そのために何でもする。チームを日本一にしたい」。現役を終えても、頂点を目指す思いは変わらない。【神稔典】