冬夏連続オリンピック(五輪)出場を目指す平野歩夢(20=木下グループ)が、東京大会出場へ前進した。地元でもある村上市の期待を背に「ホームコース」に立ち、3本目に68・7の高得点をマーク。昨年世界選手権代表の永原悠路(13)に5点以上の差をつけ、1位で12日の決勝に進んだ。抜群の高さを武器に安定したトリックを披露。初の日本一と東京五輪に直結する強化指定選手入りを引き寄せた。

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平野の滑りに、歓声が沸いた。縦長にボウルが配置された「ハーフパイプ」状のコースに多くの選手が苦しむ中、持ち前の高さを生かしたトリックで他を圧倒した。完璧なマックツイストを決め、スノーボードにはないフリップ(板を回転させる)技も成功。無理をすることなく70点近いスコアで「予選(準決勝)としては満足」と話した。

3月の日本オープンを制した笹岡が左ひざの負傷で本調子でなく、ストリートとの二刀流の池田もケガで欠場した。慣れ親しんだコースで大会スポンサーは所属する木下グループ。「完全ホーム」の大会で、優勝の準備は整っていた。それでも、連続五輪銀メダルのスノーボードとは「正直、別物」。足から離れるボードを操り、雪ではなくコンクリートの上を滑った。

追い上げてくる12歳と13歳とは違う。この競技で20歳は大ベテラン。この日出場した25人の中で2番目の年長だった。3月の大会から2カ月。「短い日程の中で、どうモチベーションを保ち、ピークを持っていけるか。ケガをしたら出られなくなるし」。細心の注意を払いながら調整を続けてきたが、5日前の練習で左手首を捻挫。テーピングを巻いての出場だった。

3位になった日本オープンとの総合成績で3位に入れば東京五輪に向けた強化選手の指定を受ける。派遣される大会で五輪ランキングにつながるポイントを獲得しなければならないが、目標として東京五輪も見えてくる。優勝の自信を聞かれて「分かりません」と答えた平野だが、東京五輪への思いは少しずつ形になってきた。【荻島弘一】

◆東京五輪への道 パーク、ストリートともに出場選手数は男女各20人。今年10月以降に行われる世界選手権各3位までとワールドスケートが設定する五輪ランキング上位に1カ国最大3人の出場権が与えられる。世界ランキングはワールドスケートが設定する大会での獲得ポイントによる。日本オープンと今大会の総合成績で各上位3人が「強化指定選手」となり、ポイントが獲得できる大会に派遣される。