もう優勝しかない! 2度の4大大会優勝を誇る世界ランキング9位の大坂なおみ(22=日清食品)が壁を突破した。前哨戦で苦戦した同21位のアネット・コンタベイト(エストニア)に6-3、6-4のストレート勝ち。1度も自分のサービスゲームを落とさず2年ぶりの8強入りで、準々決勝では同93位のシェルビー・ロジャース(米国)と対戦する。過去の4大大会では、4回戦を勝ち上がった2度ともに優勝している。

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優勝への壁を「今年のベストマッチかも」という最高のプレーで突破した。開始が午後11時を回ったが「太陽と暑さが好きだから本当は昼にプレーする方が好き。ただ全米でセンターコートの夜の試合は特別だから気にならなかった」。先週のウエスタン・アンド・サザン・オープン準々決勝でフルセットとてこずったコンタベイトに、自分のサービスゲームを落とさないどころか、ジュースもないプレーで快勝した。

緊迫感のあるレベルの高い試合だった。前回は第2サーブを狙われ苦戦しただけに、第1サーブを71%の高い確率で入れ、第2サーブも深くコントロール。逆に、相手の第2サーブには「前回は積極的じゃなかった。もっと攻撃したい」とやや強打で圧力をかけた。第2セットは何度もチャンスを奪うが、相手も踏みとどまる展開が続いた。女子には珍しく、第9ゲームまですべてサービスキープ。しかし「ラケットを振り切ろう」と、第10ゲームで相手の守備を打ち破った。

完全に戦い方が変わった。豪打するリスクの高いショットを減らし、その分、決定打も減るが凡ミスも減るという安定したプレーが今回の特徴だ。それには「休んでいる長い間、たくさんのことを考えた」と、冷静に自分を分析。そのプレーを導いているのは、落ち着いてプレーができている精神面にほかならない。

昨年の全米と比べるとよく分かる。昨年は最初の4試合で合計86ゲームを戦い、決定打、凡ミスともに107本。1ゲーム平均、1・244本だった。今年は、4試合で合計92ゲーム。決定打は90本で、凡ミスは105本。1試合平均、決定打は0・978本と昨年より少ないが、凡ミスも1・141本と減った。

吉兆のデータもある。過去、4大大会本戦に出場したのは16回。優勝した18年全米、19年全豪の2回を除いた14回すべてで、4回戦までに敗退している。つまり4回戦が1つの壁であって、そこを勝ち上がれば優勝しかない。テーピングを施した左太もも裏の痛みも見せず、「優勝するために、ここにいる」。自信満々に宣言した。【吉松忠弘】

◆WOWOW放送予定 8日午前7時50分から。9日午前0時55分から。ともにWOWOWライブ。男女シングルス4回戦、準々決勝ほか。生放送。WOWOWメンバーズオンデマンドでもライブ配信。