バスケットボール男子の関東大学リーグで、山梨学院大が驚異的な足跡を残し、1部へと駆け上がった。2部に昇格した19年は22戦全敗で3部に戻ったが、コロナ禍を経て21年に2部再昇格を果たすと、22年は2部で2位に入り1部昇格が決定。就任5年目を迎える古田悟監督(51)は元日本代表主将で、複数のBリーグチームを指揮した実績の持ち主。名将に率いられた伸び盛りのチームが、1部でさらなる旋風を巻き起こす。

198センチの古田監督(右)と、主要選手で2番目に小柄な170センチの後藤主将
198センチの古田監督(右)と、主要選手で2番目に小柄な170センチの後藤主将

4年間の大学バスケ生活は、22戦全敗から始まった。山梨学院大の後藤雅史主将(4年)が入学した年、チームは2部で1つの白星も挙げられず降格。わずか1シーズンで3部に逆戻りした。後藤は「レベルの高さを感じた。壁は高いなと思った」と振り返る。


コロナ禍の直撃を受けた後藤の大学2年目は、日程が大幅縮小、昇降格なしのルールながら3戦全勝で優勝。翌年はさらに力をつけて11戦全勝で2部再昇格を果たした。


主将として迎えた最終学年の22年は、対戦相手のレベルが格段に上がった中で19勝3敗の2位に入り、1部昇格を決めた。入学時を振り返り、後藤は「1部に上がって卒業することになるなんて想像すらしていなかった」と感慨に浸る。

シュートを放つSG武内理貴
シュートを放つSG武内理貴

躍進するチームを育て上げてきたのが、後藤が入学した数カ月後に就任した古田悟監督だ。かつて日本代表で主将を務めた名選手は、指導者としてB1横浜BCやB2東京Zを指揮した実績も持つ。


わずかな期間で、山梨学院大を3部から1部へと引き上げた。それでも古田監督は「コロナがなければ、もう1年早く、1部に上がっていた」と言う。昨年3月の新人戦、さらに約1カ月後のトーナメント戦と、1部の強豪にまじって、いずれも6位と健闘した。部員たちの成長を肌で感じているからこそ、快進撃をサプライズとはとらえていない。


躍進を支えるカギの1つが守備力だ。春のトーナメント戦で得点王に輝いた共同主将の武内理貴(3年)ら攻撃力に目がいきがちだが、古田監督が重視するのは「まずはきっちり守ること」。練習でも守備に重点を置く。昨季2部リバウンド王の留学生、コンゴ共和国出身のカボンゴ・ジョナサン(3年)や、守備力の高い山田光哉(3年)がキーマンとなる。


チームのもう1つの特徴が、出場機会を分け合う「タイムシェア」。主力選手が常にプレーするのではなく、控えメンバーも次々とコートに送り込まれる。試合中に息を整える時間をしっかり確保することで、いざコートに立てば縦横無尽に走り回ることができる。

ディフェンスが魅力のSG後藤雅史主将
ディフェンスが魅力のSG後藤雅史主将

培ってきたこのシステムが、1部の強豪と戦う新シーズンで、より効果的に機能するはずだ。古田監督は「1人で40分戦い抜くことは無理だけれど、10分や20分なら1部相手でも互角に戦える」。試合序盤で状態を見極め、勝負どころで好調選手を送り込む。采配力もこれまで以上に重要となる。


好結果を残すことで、チームは高校生からも注目される存在となってきた。高い素質を持った選手たちが、山梨学院大を進路先に選ぶ好循環が生まれている。春には約40人の新入部員が加わる予定で、部員数は約100人の大所帯に。戦力の厚みは大きく増す。


関東の大学バスケは4月下旬からのトーナメント戦や、その約1カ月後の新人戦で経験を積み上げ、秋のリーグ戦へと突入していく。古田監督が率いるチームでは初の1部参戦となるが、気後れすることはない。「ベスト4を狙えるチームになってきたかなとは思っている」。昇格初年度から、思う存分暴れまくる。【奥岡幹浩】

★元日本代表主将&Bリーグ指揮


◆古田悟(ふるた・さとる)1971年(昭46)8月3日、愛知県生まれ。愛工大名電高3年時にウインターカップ優勝。日体大を経て94年に三菱電機に入社。98年に日本代表に初選出。06年世界選手権(現W杯)で主将を務める。11年引退。U22代表コーチを務めた後、12年江戸川大コーチに就任。その後、女子の秋田銀行、東京羽田、男子のB1横浜BC、B2東京Zで監督を務め、19年7月から山梨学院大監督に就任。家族は妻と1女。198センチ。血液型B。


★エース武内 B2愛媛特別指定


エース武内は昨年12月から、大学に在籍したままBリーグで出場可能な「特別指定選手」としてB2愛媛で経験を積んでいる。3月上旬までプロ選手とともに行動。試合出場機会は少ないものの、「練習の取り組み方や、練習強度の高さなど勉強になることばかり」と刺激を受ける毎日だ。山梨学院大の得点源で、3点シュートを得意とする。大学に戻ったあとは、Bリーグで得た経験をチームに還元していく。



武内 理貴(たけうち・りき)

■愛媛オレンジバイキングス

ポジション SG

生年月日 2002年3月17日

出身地 愛媛県

身長/体重 181cm/75kg

経歴 久米中-松山工高―山梨学院大

B.LEAGUE通算成績(2023年2月28日現在)

出場試合 9

得点 14(3P:3本)

リバウンド 1

アシスト 1

出場時間 29.75分


★後藤主将「一番怒られたけど…」


卒業間近の主将、後藤は社会人としてもバスケを続けていく。今春から実業団チームの埼玉フレイサンズ八潮に加入予定。「大学でも下部から上がっていった。次の場所でも、どんどん上を目指したい」。山梨学院大での4年間、古田監督のもとで守備力を高め、さらには人間力も磨いてきた。「主将を務めたことで視野が広がった。古田さんにはチームで一番怒られたけれど、その分成長できた」と笑顔でうなずいた。


★OBに元B3岩手・今井宏樹氏


◆山梨学院大バスケットボール部男子1978年(昭53)創部。85年に関東リーグ2部に昇格し、87年に1部昇格している。14年4月から大学の強化指定部となる。23年度は新入部員が40人ほど加わる見込みで、部員数は約100人の大所帯に。片田興部長。主なOBは元B3岩手の今井宏樹氏。