男気(おとこぎ)が、好調の巨人を止めた。広島黒田博樹投手(41)が、9回4安打無失点の好投で開幕から自身2連勝とした。日本では07年6月3日の楽天戦以来となる完封劇。球数が100球を超えても9回の登板を志願し、熟練の投球術で三塁も踏ませなかった。日米通算200勝まであと5勝とし、大記録までのカウントダウンも始まった。

 3万超の観客席から黒田コールが沸き起こる中、マウンドに仁王立ちした。3点リードの9回、2死二塁。ギャレットを120球目のツーシームで中飛に打ち取った瞬間、大きく息を吐き、捕手石原の肩を抱擁するようにたたいた。

 「(9回は)1人でも投げようと思った。結果的に最後まで行けて良かった」

 志願のマウンドだった。8回まで108球。直前には無死一、二塁のピンチを招いた。「どうする?」と問う畝投手コーチに「行きます」。黒田は即答した。疲れはあった。しかし、開幕から7試合のべ18人の中継ぎが登板。前日まで2試合終盤に逆転されていた。ヤンキース時代は伝説のストッパーのマリアーノ・リベラでも2連投した翌日は休みを与えられていた。「毎週1回でも中継ぎが今日は休めるなという日があるのと、ないのでは全く違う」。大黒柱としての責任が9回のマウンドに向かわせた。

 立ち上がりからスプリットとスライダーの切れ味が鋭く、打者の手元で球が動いた。オープン戦、前回登板の3月26日DeNA戦で打たれた左打者には内角カットボールでえぐった。「バットに当てられてもファウルになる。カウントを稼げたのは大きかった」。当たっている2番立岡、4番ギャレットらを無安打に抑えた。

 三塁も踏まさず4安打完封。昨年6月30日、完封目前でサヨナラ負けした東京ドームの借りを返し、独走態勢に待ったをかけた。「野球は勝負の世界。やるかやられるか。相手を倒すつもりで投げないといけない」。昨季、大瀬良に伝えたメッセージをこの日ナインに示し、悪い流れを断ち切った。

 緒方監督は「さすが黒田。ピンチもあったけど、ピンチと思わせなかった」とうなった。日米通算195勝目を完封で飾った右腕に最敬礼。不惑を超えてもなお、限界を知らない41歳が今季も広島の先頭を走る。【前原淳】

 ▼41歳1カ月の黒田が日本復帰後初完封で2勝目を挙げた。日本での完封は07年6月3日楽天戦以来となり、巨人戦の完封は02年5月24日、06年4月27日に次いで10年ぶり3度目だ。40代投手の完封勝ちは10年9月4日山本昌(中日)以来8人目で、41歳以上では若林(阪神、毎日)大野(広島)山本昌に次いで4人目になる。40代投手が巨人戦で完封は48年若林(2度)10年山本昌に次いで3人、4度目だが、黒田の被安打は4本だけ。巨人を5安打以下に抑えて完封した40代は黒田が初めてだ。