この悔しさを忘れない。楽天ドラフト1位のオコエ瑠偉外野手(18)が西武戦に「2番・中堅」で初先発し、3打数無安打で途中交代した。2月の練習試合で2点適時打を放った左腕バンヘッケンの前に凡退3つと沈黙。8回無死一塁の好機に、犠打を望むベンチから代打福田を送られた。節目の初スタメンは初の途中交代だった。

 淡々とヘルメットを脱ぎ、ベンチへと戻った。同点で迎えた8回無死、前打者の岡島が中前打。ネクストバッターズサークルで勝ち越しの好機に備えたオコエは、打席に入る直前に交代を告げられた。「代打、福田」。確実に走者を進めるために犠打が必要な場面だった。理解はしていた。それでも「正直、打てないよりも悔しかったです」と口惜しさがにじんだ。

 甲子園を沸かせた関東第一時代、試合での犠打を試みた記憶はない。「高校野球は、打って、転がして、走れば何とかなったんです。でも、プロはそうじゃなかった」。無死一、二塁の好機で迎えた3回の第2打席。カウント1-2からヒッティングに出て二飛に倒れた。対戦経験のある左腕から、犠打に代わる進塁打を放てなかった。「ほんの少し、タイミングがずれました。練習試合で対戦した時とシーズンとでは全然違った」。プロの「2番」が求められる難しさを全身で受け止めた。

 梨田監督は「あのケースはバント。苦手なものをやらせて失敗するのは、監督としてチームに申し訳ないので」と交代の場面を振り返る。2月の久米島キャンプ。犠打の基礎が身についていなかったオコエに、体の前でバットを構えるんだと一から指導した。技術面は、時間をかけて学べばいいと考えている。「これから、マシンでバント練習とかをするかもね。足が速いのでセーフティーがあってもいい。守備、走塁は1軍で十分やれる。あとは自力で塁に出ること」。初スタメンで見えた課題を端的に伝えた。

 足りないものは分かっている。オコエは「まずは打たないと試合に出られない。その中で、バントを含めたいろんなことを意識していきたい」と自分に言い聞かせた。第1、第3打席では初球からフルスイング。いずれも凡退したが「初球から振っていくのが自分の持ち味。そういうプレースタイルだから使ってくれていると思う」と、長所を貫く姿勢は決して忘れなかった。今後はオリックス戦を行う関西1軍遠征に同行。8日からは2軍戦との親子ゲームで実戦の機会を補っていく。やるべきことが明確になった。【松本岳志】