<世界陸上>◇18日◇男子200メートル1次予選◇ベルリン五輪スタジアム

 【ベルリン=佐々木一郎】男子100メートルを9秒58の世界新で制したウサイン・ボルト(22=ジャマイカ)が、200メートルは寝ぼけ眼でスタートした。1次予選5組に登場し、20秒70の1着で通過。午前10時29分からの開始に、ウオーミングアップするように走った。連覇を狙ったタイソン・ゲイ(27=米国)が欠場するなど、2種目制覇へライバルは不在。記録を狙う本気の走りは、20日(日本時間21日未明)の決勝だけになりそうだ。

 スタート前、弓を引く得意のポーズ「ライトニング(稲妻)」は見せなかった。代わりにボルトは、両手を枕にするしぐさで「まだ眠いよ」と言うようにおどけた。スタートの反応時間は、同組で最も遅い0秒183。コーナーを抜けても、後続との差は少ない。終盤に抜け出し、最後はジョギングをするようにフィニッシュした。

 決勝を含め、200メートルは3日で4レースを走る長丁場。100メートルと合わせれば、6日で8レースになる。力を抜くところは、抜いてエネルギーのロスを抑えなくてはならない。まるで練習のような走りで、20秒70。北京五輪決勝の世界記録19秒30より1秒40も遅いが、1次予選5組を1着で通過した。

 だが、眠いのは本人だけで、日本人選手には強すぎる刺激になった。2つ外側のレーンで同走した斎藤は「(ボルトは)見えなかった。雷がボーンと行ったようだった」と振り返った。100メートル決勝は部屋のテレビで見たそうで「興奮して眠れなかった。見なきゃよかった」。高平は「200メートルで、世界新が出るレースを味わってみたい。末続さんの日本新は味わえたので、世界新も味わいたい」と、決勝での対決を望んだ。

 ボルトの最大のライバルとみられたゲイは、欠場した。今季途中から股(こ)関節を痛めており「悪化させる危険を冒さず、欠場することを決めた。リレーチームには加わりたい」と話した。ボルトの優勝は、アクシデントさえなければ確実。興味は記録だけに絞られた。

 100年間は不滅と言われたマイケル・ジョンソンの19秒32を北京五輪で更新し、さらなる記録は簡単でない。ボルトも100メートル決勝後に「200メートルで世界記録を破れるとは思わない。一生懸命やるけど、100メートルより難しいだろう」と話している。だが、何が飛び出すか分からないボルトのショー。目が覚めた時、夢の続きが見られるかもしれない。