<6月前半の陸上競技展望>

 トラック&フィールドはシーズン前半の山場。日本選手権で8月のモスクワ世界陸上代表の大半が決定する。男女のやり投げ、男子100メートルと200メートル、棒高跳び、ハンマー投げなどで、世界陸上の活躍が可能となる記録が期待されている。

 男子100メートルの焦点は誰が最初に9秒台を出すか。桐生祥秀(17=洛南高)は4月の織田記念で10秒01の日本歴代2位と、世界を驚かせた高校生。山県亮太(20=慶大)は昨年のロンドン五輪で10秒07と、五輪日本人最高タイムで準決勝に進出した。

 今季は若手2人に押され気味だが、この種目で日本選手権4連勝中の江里口匡史(24=大阪ガス)も10秒07を持ち、例年6月に調子を上げてくる。3人の争いはし烈を極めそうだ。

 男子やり投げは村上幸史(33=スズキ浜松AC)とディーン元気(21=早大)が激突する。昨年は84メートル03と83メートル95。わずか8センチ差でディーンが勝ち、ロンドン五輪10位へとつなげた。

 今季は村上が逆襲に転じている。織田記念で85メートル96と、ディーンの持っていた日本歴代2位(84メートル28)を更新した。ディーンが出遅れているが、今季は当初から夏の世界陸上にピークを合わせる予定だった。日本選手権で再度、史上最高レベルの投げ合いを演じてほしい。

 男子棒高跳びも激戦だ。5月に5メートル74の日本歴代2位を跳んだ山本聖途(21=中京大)が1歩リードしたが、4月に5メートル70に成功した荻田大樹(25=ミズノ)も好調。日本記録(5メートル83)保持者の沢野大地(32=富士通)も加えた三つ巴の争いになるか。

 19連勝がかかる男子ハンマー投げの室伏広治(38=ミズノ)は今季初戦。77~78メートル台の投てきができれば、世界陸上ではメダル圏内の80メートルスローも可能になる。

 女子では短距離の女王・福島千里(24=北海道ハイテクAC)が3年連続100メートルと200メートルの2冠に挑む。織田記念で62メートル83の日本記録をマークしたやり投げの海老原有希(27=スズキ浜松AC)は、風などの条件に恵まれれば自身の記録更新が期待できそう。

 世界陸上は前回大会金メダルの室伏がすでに出場権を持つ。陸連が決めた派遣設定記録を破っている桐生、村上、山本、男子200メートルの飯塚翔太(21=中大)らが日本選手権で8位以内に入れば自動的に代表に決定する。海老原や荻田らA標準突破者も、日本選手権優勝で自動的に決定だ。

 女子走り高跳びの福本幸(36=甲南学園AC)らB標準の選手が優勝した場合と、A標準突破選手が日本選手権2位以下の場合は陸連理事会で判断される。【6月前半の主な陸上競技大会】6月1~2日:日本選手権混成・日本ジュニア選手権混成(長野市営陸上競技場)6月7~9日:日本選手権(東京・味の素スタジアム)