<実業団女子駅伝西日本大会>◇24日◇福岡・宗像市役所前発着(6区間=42・195キロ)

 アテネ五輪女子マラソン金メダルの野口みずき(32=シスメックス)が、12年のロンドン五輪に向けて涙の「復活ラン」を果たした。08年北京五輪を左足付け根を痛めて欠場後、故障に泣かされ続けてきたが、今夏から本格的な練習を始めて出場。3区(10・5キロ)を走り、練習不足で区間5位も「いいスタートが切れた」と手応え十分だった。ダイハツが2連覇を飾り、上位7チームが12月19日に岐阜で行われる全日本大会の出場権を得た。

 涙が止まらなかった。野口はアンカーの西川が3位でゴールすると、移動した宗像市役所のロビーで喜びを分かち合う選手の中で1人大泣き。周りに大勢の報道陣や観客がいたが、感極まり人目をはばかることもなかった。

 2連覇を狙った北京五輪は、左足付け根の故障で欠場した。公式レース出場は08年5月の仙台国際ハーフマラソン以来2年5カ月ぶり。今大会は同五輪後、故障に苦しみ続けたが、夏場からの急ピッチ調整でなんとか間に合わせた。しかも、苦しい戦いが予想された中でチームは初出場で全国切符をつかむ3位入賞。さまざまな思いが一気にこみ上げてきたという。「みんなの頑張る姿に励まされたし、みんなが落ち込んでいた時に支えてくれた。すごいいろんな思いがあって、みんなを見ていたら自然に涙が出た。沿道の声援がうれしくて、戻って来たんだという実感があった。レースに戻ってこれたことが収穫」と、満面の笑みを浮かべた。

 ロンドン五輪出場に向けて合格点を与えられる内容だった。野口が起用されたのは、ワコール福士ら各チームのエースが集う2番目に距離が長い3区。3位でタスキを受けると、スタート直後の1キロを3分5秒で入るハイペース。「やっぱりいっちゃった」という意気込みがたたり、後半失速して1、2位の選手に差を広げられた。だが、区間5位の力走で役目を果たした。

 野口は「若い子が走った区間で5位。(ロンドン五輪出場は)まだまだ行けるぞと思った。ロンドンに向けて全然切れていない。いいきっかけになった。(左足付け根の)痛みは大丈夫です」と声をはずませた。広瀬永和監督(45)は「ホッとしました。練習をやってない中では上出来です」と胸をなで下ろした。

 復帰しては故障する繰り返しに、野口は「一瞬、引退も考えたことがある」という。だが、レースに出場できない長い時期を「試練」ととらえ、乗り越えてきた。「去年1年レースに出れず悔しかった。でもいい経験だったのかも。精神的に強くなれたかな」。第一人者の新たな挑戦がこの日から始まった。【菊川光一】