陸上男子400メートル障害で世界選手権で2度銅メダルを獲得した為末大(33=a-meme)が、再起をかける出発点に東京・浅草寺を選んだ。今月の日本選手権に敗れ、世界選手権(8月、韓国・大邱)の切符獲得に失敗。去就が注目されていたが「このまま終わりたくない。自分を信じて来年のロンドン五輪を目指す」と決意し、7月30日に浅草寺で行われる「東京スポーツタウン2011」への参加を表明した。

 為末は07年に丸の内のオフィス街で「東京ストリート陸上」を実施し、成功を収めた。それに続く第2弾として、自ら同イベントに参画。浅草寺の境内を用いた奇想天外な「ストリートイベント」を通して、ロンドン五輪に向けた弾みとする意向だ。加えて、今回は東日本大震災で被災した子どもたちを招待し、一緒に走り、自らの走る姿で勇気と希望を与えたいという思いもある。日本復興と自らの復活をかけ、東京の下町から再出発する。

 08年の北京五輪以降、ひざなどの故障に悩まされ、競技活動を休止した。ひざの痛みが完全に消えた今春、2年8カ月ぶりにレース復帰。世界選手権の参加標準B記録(49秒40)の突破を狙い、5月3日の静岡国際では49秒89をマークした。しかし、今月の日本選手権では、4年ぶりの世界選手権出場が目前に迫ったものの、決勝では後半にスタミナ切れ。まさかの6位(50秒55)に惨敗した。

 それでも為末の心意気は熱い。「まだあきらめたわけじゃない。もう1度、自分を取り戻したい」。今後は米国、欧州などの小さなレースを重ね、試合勘を研ぎ澄ましていく方針。その一方で今春の国内GP大会、日本選手権に出場し、日本で走る喜びと励みを得た。そんな思いから「もっと国内で走りたい」。本格的なレースではなくあくまでイベントだが、為末には関係ない。侍ハードラーが浅草寺の仲見世を疾走し、夢のロンドンへと駆けだしていく。