原点回帰で攻める!

 女子マラソンのロンドン五輪最終選考レースで、11日号砲の名古屋ウィメンズ(旧名古屋国際、ナゴヤドーム発着)の招待選手による会見が9日、名古屋市内で行われた。1月の大阪国際を左太もも痛で回避した野口みずき(33=シスメックス)にとっては、4年4カ月ぶりとなるフルマラソン。故障に苦しんだ04年アテネ五輪金メダリストは、10年前に初マラソン初優勝を飾った地で、「挑戦者」として攻め抜く姿勢だ。

 

 ちょっぴり伸びた前髪は目線を隠していた。野口が故郷三重に近い名古屋で、スタートラインの手前まできた。1月の大阪国際ではレース4日前に欠場を決断。左太もも痛も癒え、2月の中国・昆明合宿で再び仕上げた。壇上の右端に座ると、隣にいた同学年の渋井と談笑する。フルマラソンは07年11月の東京国際以来。大阪の前、眉毛のラインに髪がそろっていた女王は「挑戦者」を強調した。

 野口

 私にとって4年半(実際は4年4カ月)ぶり。この地名古屋は縁もあって、10年前に初マラソンを走りました。初心に戻った気持ちでできるのでチャレンジャーとして走りたい。

 まさに原点の地だ。02年3月10日、トラックやハーフマラソンで圧倒的強さを見せていた23歳が前身の名古屋国際で初マラソンに挑戦した。気温20度近い中、26キロ過ぎから独走。2時間25分35秒で初優勝し、6戦5勝と華麗なマラソン歴の出発点となった。今回から大会も新装し、コースも変更となったが「下見しましたが、ほとんど前とかぶっている」。若き日の記憶をたどり、不安はない。

 二人三脚で歩んできた広瀬監督も、「初心」を歓迎する。「そういう(攻める)レースをしないと勝てない。野口のレースをしてくれれば、それでいい」。積極的な走りこそ野口のスタイル。昆明では2度の30キロ走などでスピードを磨いた。すべてを出せば、結果がついてくる自信はある。

 野口

 ホント、4年って長くて、何度も何度も諦めそうになった。04年に金メダルを獲得して、あの大舞台で喜ぶ、あの瞬間を味わいたくてやってきました。

 雨の日の早朝に走るアーケードの「三条商店街」は、故障で苦しんでいた時から千羽鶴やのぼりを立てて応援する。新幹線で隣になった中年男性に、こっそりと「あなたは金メダリスト。あきらめず、がんばってください」とメモを渡されたこともある。「いろんな人の支えがあったから、ここまで来られた」。万感の思いとともに、アテネの女王が帰ってきた。【近間康隆】

 

 ◆女子マラソンのロンドン五輪代表選考

 昨年の大邱世界選手権と横浜国際、1月の大阪国際、今回の名古屋ウィメンズの4つが選考レースで、3月12日の理事会で3人が選ばれる。大阪国際を2時間23分23秒で制した重友梨佐(天満屋)は確実。横浜国際で優勝した木崎良子(ダイハツ)も1歩リードしているが、2時間26分32秒のタイムがネック。世界選手権はメダル獲得の最上位者が内定だったが、赤羽有紀子(ホクレン)の5位が最高だった。