勝つのはディーンか、村上か-。今日6日に行われるセイコー・ゴールデングランプリ川崎(等々力陸上競技場、日刊スポーツ新聞社共催)の記者会見は5日、川崎市内で行われた。ロンドン五輪の表彰台を狙う男子やり投げの超新星・ディーン元気(20=早大3年)は、先月29日の織田記念で記録した日本歴代2位の84メートル28に続くビッグスローを宣言した。対する09年世界選手権銅メダルの村上幸史(32=スズキ浜松AC)も、ディーンの成長を大歓迎。やり投げの「ビッグ2」が、ロンドンに向けたハイレベルな戦いを誓った。

 日本陸上界で今最もホットな男こそ、ディーンだ。織田記念で84メートル28の大アーチ。自己記録を一気に4メートル68も更新し、五輪参加A標準記録(82メートル)を突破。国内無敵を誇った第一人者・村上の自己記録(83メートル53)もあっさり打ち破った。昨年の世界選手権に置き換えても、銅メダルのマルティネス(キューバ)にあと2センチ。一躍、ロンドンのメダル候補に名乗りを上げた。

 ディーン

 動きの感覚は残っている。織田まではA標準を超えることを考えてやってきたが、これからは、もっとアベレージを上げていくことが必要。欲を出さず、自分のできる投げをしたい。それが結果につながっていくはず。

 国内のトップアスリートと肩を並べて会見に出席。まだ20歳だが、緊張した様子もなく、泰然自若とした受け答え。隣に座った村上から「彼には勢いがある。将来、確実に伸びていく大事な部分」と評されると、その瞬間だけ、百獣の王ライオンに似た、強気な表情を崩した。

 冬を越え、大きく成長した。2月に「やり投げ王国」フィンランド代表の合宿に参加。英国人の父を持ち、堪能な英語でコミュニケーションを図った。「フィンランドで85メートルくらい行くぞって言われた。向こうの人は85メートル投げても普通なんです。95メートル超えて初めて『わーっ』となる。去年までは(精神的な)壁があったけど、今はない」。加えて技術面では、最後に踏み出す左足のタイミングを早めたことで、肩の開きがなくなった。サイドスロー気味だった投げ方が、しっかり上から放てるようになった。それが記録につながっている。

 今回の川崎には村上のほか、織田記念を制したファーカー(ニュージーランド)、自己記録87メートル33を持つルースカネン(フィンランド)ら世界の強敵が出場する。五輪の表彰台を占う上でも、大事な前哨戦になる。周囲が期待する「メダル」を口にすることはないが、それでもディーンは「ロンドンで親孝行をしたい」。父の母国で行われる五輪は特別だ。「まだまだ記録は伸びる」と言う新星ディーン。夢のロンドンへ、まずは等々力からビッグアーチをかける。【佐藤隆志】