<横浜国際女子マラソン>◇17日◇山下公園発着(42・195キロ)

 かつて冬季五輪を目指した“プロ”ランナーの野尻あずさ(31=ヒラツカ・リース)が、2時間28分47秒で日本人トップの2位に入った。28・5キロ付近でトップの座を譲ったが、安定した走りで順位をキープ。来秋アジア大会(韓国・仁川)代表候補に名乗りを上げた。

 優勝争いは30キロ手前で消滅。タイムも決して手放しでは喜べない。それでも野尻には達成感があった。優勝したマヨロワと抱擁。それ以外に、喜びを分かち合うチーム関係者はいない。プロとして覚悟を決めたアスリートの姿だった。

 海外勢が自重する中、那須川と先頭争い。25キロ過ぎで振り切るが「すんなり行くとは思わなかった」。抜かれたマヨロワと足が接触し、動揺を見透かされて突き放された。「動揺してる場合じゃない。メンタルも強くしないと」。課題も冷静に自己分析した。

 紆余(うよ)曲折のアスリート人生だ。ノルディックスキー距離で高校総体準優勝、日大ではインカレ3冠。ユニバーシアードにも出た。だが夢に見た10年バンクーバー五輪代表の座が消滅。「このままでは終われない」と山下監督に見いだされ第一生命入りした。

 スキーで鍛えた上半身を生かした走りで、転向3季目の11年には世界選手権代表も経験。さらに昨年3月末には1人の練習環境を求めて退社。今年2月に後援企業がついた。地元・富山市を拠点に今夏、中部山岳国立公園の立山連峰で高地練習。真っ暗闇の中で恐怖心に襲われる中「きっと何か自分に足りないものを、この山が教えてくれる」と信じた。

 昨年に続き今年も合宿を予定していた伊豆大島が台風被害に遭い「横浜で頑張るしかない、と思った」。合宿できなかった伊豆大島へ今日にも渡り、恩返しの“優勝報告”する。【渡辺佳彦】