<陸上:谷川真理ハーフマラソン>◇12日◇東京・荒川河川敷

 最強公務員ランナーが、無名の国立大生にガチンコ勝負で負けた-。2大会連続世界選手権代表の川内優輝(26=埼玉県庁)が今年の走り初めで出場。1時間4分17秒と「タイム的には何ら問題ない」と納得の走りだったが、アッと驚く刺客に足をすくわれた。京都教育大2年で昨秋、大学の陸上部を退部した池上秀志(20)に度肝を抜かれた。

 10キロ付近の登り坂。先頭の川内は池上に並びかけられた。ここは貫禄の走りで突き離す。だが直後の下り坂で「『こいつ余裕がないな』と見透かされたのか、ガツンとやられた」と逆にスパートされる。みるみる差を広げられ、1分8秒の大差で2位に甘んじた。

 川内

 日本には強いのがゴロゴロいますね。今日は大学生に新年早々、頭をガツンと殴られて良かった。意識の差。彼からはストイックさが伝わってきた。

 脱帽の川内に対し「川内さんも生身の人間。今日はたまたま」と恐縮しきりの池上だが、大物感はたっぷり。京都・洛南高時代は、世界最速高校生・桐生祥秀の2年先輩。全国高校駅伝に3年連続出場も「マラソンを目指すから箱根駅伝も興味がない」と地元の国立大に進学。退部後はプロランナー藤原新の門下生として独立独歩で練習する。

 ドイツの哲学者カントの著書を読みふける自称「変わり者」。1時間3分9秒で自己ベストを2分18秒も更新し「川内さんの偶像が壊れ、身近な存在になった」。君原健二、瀬古利彦を目標に掲げ、周囲から「修行僧」と呼ばれる新星の初マラソンが楽しみだ。【渡辺佳彦】