アジアNO・1で、世界最年少9秒台だ!

 韓国・仁川アジア大会(9月19日開幕)に出場する男子短距離の桐生祥秀(18=東洋大)ら日本代表が19日、北海道恵庭市の屋内施設で練習を公開した。桐生は日本インカレ(9月5日、埼玉・熊谷)での200メートル専念と、アジア大会後の休養を表明。ア大会が今季最後のレースとなるため、トレイボン・ブロメル(米国)が6月に記録した18歳11カ月での最年少9秒台記録の更新(桐生18歳9カ月)を、アジア最大の舞台1つにかけることになった。

 アジア最速を目指す大会の開幕まで1カ月。桐生は午前にリレーのバトン練習、そして80メートルを3本走り、午後は休養に充てた。「練習不足なので、まず練習しようという感じです。アジア大会でしっかり走れるようにしたい」と今季最後の目標へ思いをはせた。

 陸上を始めて7年目。今季は「一番ケガの多い年」だ。6月に右足底部の疲労性関節炎を発症、7月の世界ジュニア選手権では銅メダルを獲得した100メートルの準決勝で、右足股関節を痛めた。同決勝では足がつった。強度の高い練習ができるのは週1、2回。土江寛裕コーチは「トレーニング不足にもかかわらず、大会になるとパフォーマンスが上がってしまう」と、故障続きの理由を話す。

 いわば強さゆえのケガだが、わずか3日で全種目が実施される日本インカレは、疲労を考慮して200メートルとリレーだけ参加。続くア大会後は休養に入る。12月生まれの桐生には11月中旬まで世界最年少100メートル9秒台更新の可能性があるが、来季も見据えた決断で、チャンスはア大会のみとなる。

 短距離日本代表にとって、ア大会は特別な競技会だ。98年12月のバンコク大会100メートル準決勝で伊東浩司(現日本陸連短距離部長)が記録した10秒00が、今も日本最速タイムとして輝く。44歳になる伊東氏は「当時と比べて(競技の)環境は良くなっている。そろそろ(更新を)期待できるはず」と思い出の大会での9秒台突入を心待ちにする。

 昨年の世界選手権で10秒00で走った中国の27歳、張培萌らライバルは多くなりそうだが、桐生の作戦はいたってシンプルだ。「普通にスタートを決めて、中間でスピードに乗って、1番でゴールできれば」。その先に夢の9秒台が待っている。【中島洋尚】

 ◆桐生の今後の予定

 23日まで現在実施中の日本代表短距離陣の北海道合宿に参加。9月の日本インカレは、5日の男子400メートルリレー予選を皮切りに、6日に同決勝と200メートル予選、7日に同決勝に出場する予定だ。アジア大会は9月27日に100メートル予選、28日に同準決勝と決勝、29日に400メートルリレー予選、30日に200メートル予選、翌10月1日に同準決勝と決勝、2日に400メートルリレー決勝に出場する見込み。