ラグビーW杯イングランド大会に臨んだ世界ランク13位の日本代表は初戦で同3位の南アフリカと対戦し、激闘の末、劇的な金星をつかんだ。先制点を奪うなど終始主導権を握り、持ち味の体力勝負で終了間際、カーン・ヘスケス(30=宗像サニックス)のトライで逆転に成功した。優勝候補の一角を崩し、23日にグロスターで行われるスコットランドとの次戦へ、大きな自信を得た。

 歴史を変えるノーサイドの笛は、サポーターの狂喜の叫びにかき消された。うなだれる南ア、騒然とするスタジアム。異様な雰囲気の中で、桜の戦士たちは解き放たれたようにはしゃぎ、跳び上がって喜んだ。完璧な試合運びで、誰も予想しなかった勝利をつかみ取った。

 ボールを保持して攻め続けるスタイルにあって、南アに対しては前半はキックも使って相手を走らせて消耗させた。そして後半のスタミナ勝負に持ち込む。難敵撃破の策がはまった。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の“予言”が的中。「セットプレーでプレッシャーをかけられる。どんなボールでも、勝ち取ったらハイテンポで動かす」。3-7の前半30分には相手ゴール前左5メートルの位置から押し勝って逆転トライを奪う。後半は疲れた南アに対し、五郎丸が得意の正確なキックでPGを決め続けた。そして終了間際、敵陣に押し込み続け、最後の最後にヘスケスが逆転トライを決めた。

 ジョーンズHCが12年の就任から日本人の長所と見たのが粘り強さ。「世界一のフィットネス(体力)」を掲げ、徹底的に追い込んできた。合宿では毎朝6時からウエートトレーニングを敢行し、直後にグラウンドの横幅を目いっぱい使ったインターバル走を全力で30本近く走ることもあった。「世界で最もハードワークしてきた」(ジョーンズHC)。努力は報われた。

 これで目標の8強にも一気に近づいた。日本ラグビーの歴史で最も偉大な勝利だ。世界中を驚かせた大金星は、24年もの間続いたW杯未勝利の苦い記憶を吹き飛ばした。【岡崎悠利】