<ラグビー強化試合:日本代表75-3ロシア代表>◇6日◇東京・秩父宮ラグビー場

 カーワン・ジャパンの遅咲き新戦力が、今年最後のテストマッチで勝利の原動力になった。世界ランク13位の日本は同18位のロシアに75-3で快勝。日本人として3番目の年長記録となる32歳4カ月での初キャップ、FB田辺淳(三洋電機)が、11本中10ゴールを決めた。前週サモア戦から先発9人を入れ替えて臨んだ“若手”の中で、32歳の新人が期待に応えた。これで今年の日程は終了。来年のW杯(ニュージーランド)へ、来年2月25日に最初の代表40人が発表される予定。

 10本目のゴールを決めた瞬間に、ノーサイドの笛が響いた。田辺は1人、近くにいた主審と握手し、格別の瞬間を味わった。75-3。そのうち20点を、初の代表キャップを踏みしめた右足が稼いだ。「人生で一番楽しい80分でした。このためにラグビーをやってきたと言っても過言ではない。4トライと同じ価値ですから、貢献できたかな」と、笑みが絶えなかった。

 抜群の安定感だった。正面のキックは4本で、残りは両端から。だが、昨季トップリーグ得点王で今季も2位につける男は苦にしなかった。ニュージーランドに9年間いて英語も堪能。外国籍選手への指示も的確で、後半14分からWTBに入ると、左サイドを突破してアシストもした。「田辺は非常に良かった。声をしっかり出してくれた」というカーワンHCに「英語が話せて得した」と笑った。

 10月30日のサモア戦から先発9人が代わった。カーワンHCは「リスクはあったが、あえて試したかった」と言った。来年W杯へのテスト。田辺は2週間前の試合で左脇腹を痛めていた。だが、三洋電機の仲間が自身の顔写真を持って集まり「痛くないぞ」と声をかけてくれた。仲間の後押しで“選考会”を楽しめた。

 カーワンHCは「FBはうまい選手より安定感」と求める。五郎丸、立川、松下とライバルは多い。だが「今日、1つ上の自分になれた。今日の自分を乗り越えることがW杯への道。JK(カーワン)の選択肢も増えたかな」。今年最終戦で、遅咲きの新人が加わった。【今村健人】