柔道界の“闘う医学生”が、いばらの道を歩む。18年柔道世界選手権女子78キロ超級金メダルで今春に獨協医大医学部に入学した朝比奈沙羅(24)が5日、「三足のわらじを履く」ことを宣言した。

大学に近い練習拠点の宇都宮市で会見し、スポーツジムを運営する「ビッグツリー」へ所属することを発表。今年4月に実業団の強豪パーク24を退社後、同社の施設でウエートや水中トレーニングなどを週2~4日行っていた縁で加入が決まった。

ただ、今回は同社の社員になるのではなく、異業種などのスポンサー12社とも契約も締結。この日の会見には、多数の協力企業のロゴが付いた黒のポロシャツ姿で出席した。近況報告する中で、想像以上に練習環境の整備や移動費などの活動資金が必要であることを主張し、地元企業などへ支援を呼び掛けた。

「今後の柔道活動を支援してくれるスポンサーを探しています。(契約した12社のように)同業他社でも垣根を越えた複合体としてスクラムを組んでくれました。今後の柔道選手が企業所属でなくても、継続した競技活動を可能とする支援形態になると考えています。男女を通じて私が先陣を切って、新たな柔道活動を開拓していきたいです」

柔道家、医学生だけでなく、営業マンも加えた三足のわらじを履く覚悟だ。平日は大学の授業と課題に追われる日々が続くが、東京五輪の補欠でもあるため日本代表として2時間程度のトレーニングを地道に継続する。“闘う医学生”をスローガンに掲げ、「補欠として五輪金メダルを取れる準備をし続けることが義務」と言い切る。

27日には10カ月ぶりの実戦となる体重無差別で争う全日本女子選手権に出場する。会場は小学生の頃に通った総本山の講道館で、3年ぶりの全日本女王を狙う。「育った場所で試合するなんて不思議な気持ち。すごくなじみがあり、慣れている畳でやれるから楽しみでもある。試験前でそわそわしている気持ちもあるけど(第1シードであり)恥ずかしくない試合、誰がきても対応できる試合をしたい」。

幼少期から医師と五輪を夢見て、あえて苦難の多い道を選んで重圧と自分自身と戦い続けてきた24歳の勝負師。文武両道を貫く、柔道家の試練はまだまだ続きそうだ。