ジョゼ・モウリーニョ監督(55)率いるマンチェスター・ユナイテッドが、ホームで行われたプレミアリーグ第3節トットナム戦で完敗した。

前半こそ0-0で折り返したが、後半5分に右CKからイングランド代表FWケーンにヘディングシュートを決められて失点。さらに同7分、右クロスをMFルーカスに右足でたたきこまれた。同39分には再びルーカスに中央突破から右足シュートを決められ、完膚なきまでにたたきのめされた。

これで開幕3戦で1勝2敗。ESPN電子版によると、トットナム戦後のモウリーニョ監督の記者会見はわずか7分ほどで終了したという。

同監督は「試合結果が分かっているのか? 0-3だぞ0-3。0-3が何を意味するのか分かっているのか」と怒りに満ちた表情で語った後、「だが3という数字は私がプレミアリーグを制した数でもある」となぜか自身のチェルシー指揮官時代の優勝回数に言及。「これは他の19クラブの監督が優勝した回数より多い」と強調した。

現在、プレミアリーグの監督の中で優勝経験があるのはマンチェスターCのグアルディオラ監督と、マンC時代にリーグ制覇を果たしたウェストハムのペジェグリーニ監督だけ。しかもそれぞれ1度ずつだ。

モウリーニョ監督はメディアに対し「だからもっと私をリスペクトしろ」とばかりに「リスペクト、リスペクト」と呪文のように唱えて一方的に会見を終了。会場を後にしてしまった。

確かに、クラブ側がモウリーニョ監督が求めていたセンターバックの補強を実現していないなど、かわいそうな面はある。しかし試合後の会見でメディア相手にキレても良いことはない。

競技は違うが、ひどい試合の後の記者会見ということで思い出すのが07年の米大リーグ。ナ・リーグ東地区2位のメッツは最終162試合目のマーリンズ戦に勝てば首位フィリーズと並び、優勝をかけた163試合目の1DAYプレーオフが用意される状況だった。

このメッツの162試合目に先発したのが殿堂入り左腕のトム・グラビン。しかし初回、わずか1アウトしか取れず、7失点KO。メッツのポストシーズン進出は夢と消えた。

だが、こんな自身のキャリアの中でもワーストと言えるような試合の後ですらグラビンはしっかりと記者の質問に答えていた。もちろん欧州サッカーと大リーグでは文化が違うので簡単に比較はできないが、グラビンが今でも関係者からリスペクトされているのは言うまでもない。

今後マンUの経営陣がモウリーニョ監督について、どう判断するかはまだ分からない。だが欧州チャンピオンズリーグを2度制した希代の名将が、晩節を汚すような形で去っていくのは見たくない。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)