今度は金メダルを胸に旗手に-。フィギュアスケートのソチ五輪代表最終選考会を兼ねた全日本選手権から一夜明けた24日、日本代表に選出された選手らが記者会見を行った。悲願の金メダルに挑む浅田真央(23=中京大)は、閉会式での日本選手団の旗手について「選ばれたらやりたいな」と前向きに話した。選出されれば2大会連続。10年バンクーバー五輪ではライバル金妍児(韓国)に敗れて銀メダルに終わった。次こそ、一番輝くメダルとともに日の丸の旗を振る。

 浅田は少し頬を緩めながら、思案した。「う~ん、そうですね。分からないですけど、選ばれたらやりたいなと思います。(やってみて)すごくうれしかったです。思い出になりましたし、すごい光栄でした」。聞かれたのは大会のクライマックスである2月23日の閉会式での大役について。バンクーバー五輪に続く旗手のことだった。

 当時、心境は複雑だった。ライバルの金に敗れて流した悔し涙。その後、少しずつ湧いてきた達成感。「喜びと悔しさと半分半分でした。直後は自分の演技に対しての悔しさは100%でした。でも、あとあと考えれば(トリプル)アクセルも3発おりたんだとか、目指していた演技はできなかったかもしれないけど、最後までやり切ったと思えたので」。そんな複雑な気持ちを抱えながら、日本選手団の先頭で、大きな日の丸の旗を全力で振った。

 前日に閉幕した全日本選手権で3位に敗れたが、2大会連続の五輪切符はつかんだ。「バンクーバーが終わってすぐにソチを目標にして、ようやく正式に決まってすごくうれしい気持ちはあります」。あれから、はや4年。「出られることになって、(前回と)同じ気持ちでワクワクドキドキしています」と声を弾ませた。前日のフリーでは3回転半ジャンプを2本とも失敗するなど課題は残すが、その表情は極めて明るい。選手村での滞在なども「五輪全体が楽しみですね」とトーンが上がる。

 年末年始は「正月はゆっくりしたいです。初詣も行きたいです。あとはこたつで横になりたいです」と照れたように話したが、例年通り休みは最小限にして、決戦に備えることになる。2月には「彼氏が欲しい」と話したこともあったが、「(進展は)何もないですね。今はそんなこと考えてる暇はないです」と競技に集中していく。

 旗手については日本オリンピック委員会(JOC)が決めることになるが、金メダルを獲得すれば文句なく選ばれるだろう。今度こそ、「半分半分」では終わらない。すべてが喜びで満たされる結果をつかむ。その時、4年前より大きく、力強く、ソチの空に日の丸の旗も揺れるだろう。【阿部健吾】

 ◆浅田のバンクーバー五輪

 女子シングル史上初めて「1競技会で3度の3回転半ジャンプ」に成功。だが、同い年のライバルである金妍児がショートプログラム(SP)、フリーとも国際スケート連盟(ISU)歴代最高点となる合計228・56点をマーク。205・50点で銀メダル。旗手を務めた閉会式ではヘラジカのかぶり物をかぶり、仲間たちとはしゃぐ姿や、疲れから観客席で思わずウトウトする姿も。