「集大成のショー」で第2の人生を歩み出す。10日に自身のブログで現役引退を発表したフィギュアスケート女子の浅田真央(26=中京大)は、今夏のアイスショー「ザ・アイス」で引退後の初滑りを披露する。11度目の座長として、縁のある国内外の選手を集め、好きなプログラムを自ら選び、自身最高のショーでファンや関係者に恩返しするつもりだ。

 ブログで引退を発表する約12時間前、浅田は拠点である新横浜スケート場に3カ月ぶりに顔を出し、佐藤信夫氏(75)、妻の久美子氏(71)、小林れい子氏(56)らコーチ陣に頭を下げた。「終わりにします」。すがすがしい表情で約1時間、恩師らと会話を交わしたが、去る際、抱き合うとさすがに目が潤んだ。「ザ・アイスがあるので練習はしていかなきゃいけない。見に来てください」と気丈にふるまった。成長した姿で選手を卒業した。

 自己ワーストの12位に終わった昨年12月の全日本選手権。試合の予定がないその間、浅田の中で再び強い気力が戻ることはなかった。悩み、考える中で3月に引退を決断。「五輪」と「試合で自分の演技をする」という目標がなくなり、すぐには次の夢は見つけられない。それでも、07年から座長を務める「ザ・アイス」のショーは、プロスケーターとしてやると決めた。コーチ、ファンらお世話になった人に感謝の滑りをみせる。

 関係者によれば、浅田と縁の深いスケーターらが国内外から集結する見込みだ。出演者は、来週正式発表される予定。五輪シーズンを控えるため、女子のコストナー(イタリア)ワグナー(米国)ら海外の有力選手の参加は不透明な状況だが、国内では、高橋大輔ら同世代、名古屋の後輩である宇野昌磨、村上佳菜子らゆかりの選手が出演する可能性が高い。さらに11、12年の出演以来、ここ4年出ていなかった羽生結弦にもオファーを出しているという。

 内容は未定だが、浅田が思い入れのある曲を選ぶという。過去のSP、フリー、エキシビションが再演される可能性もある。「この先も新たな目標や夢を見つけて、笑顔を忘れずに、前進していきたいと思っています」と話しているが、今のところ先の目標、予定は立っていない。当面の目標はザ・アイスだけ。夏に、集大成の滑りをファンに届ける。【高場泉穂】

 ◆ザ・アイス 07年に愛知でスタートしたアイスショー。座長の浅田真央を中心に、国内外の現役トップ選手からプロスケーター、将来有望なジュニア、ノービス世代まで豪華な顔ぶれで行われる。今年は7月29~31日に大阪市中央体育館で3公演、8月4~6日に愛知県体育館で3公演、計6公演行われ、出演者は浅田真央、舞の2人のみ決定している。