体操界で“国内初”の珍事が起きた。鉄棒に出場した斎藤優佑(29=徳洲会)が、演技中に両手にはめていたプロテクターの右手側が切れ、芯が外れた。プロテクターは、てのひらの摩擦軽減に加え、芯は握力や回転の補助の役目を果たす。その芯が、降り技に行く車輪の時に外れたため、着地が大きく乱れ尻もちをついた。点数は13・550点で大失敗。しかし、所属の米田功監督が、冷静に審判のところに駆け寄った。

 15年までは、どのような理由であれ、失敗と見なされた演技だ。しかし、「選手を守る」(高橋審判部長)という理由から、15年に採点規則が改正された。つり輪と鉄棒に限り、プロテクターの破損が演技に影響したと審判が認めれば、再演技が可能となった。

 斎藤は、自分を含む1組の鉄棒6人全員が演技が終わった後、再び登場。「もう腕がぱんぱんだった」と、技の難度を下げ、今度は完璧に演技。14・700点をマークし、2位で決勝進出を決めた。13・550点のままでは決勝進出はなかった。

 「1度でも代表になって世界で戦いたい」。その思いが代表への道を残した。決勝では技の難度を表すD得点を7・3点にし「世界一のD得点」(斎藤)で代表入りを狙う。

 15年以降、過去、学生の大会で再演技はあったが、「国内の主要大会では初めてだと思う」(高橋審判部長)という珍事だった。