男子シングルスで3年ぶり出場の桃田賢斗(23=NTT東日本)が、格下のウクライナ選手を2-0で下し、好発進した。コートやショットの感触を確かめるだけでなく、相手側に落ちた球を拾うなど好マナーを披露。3年前よりひとまわり成長した姿で、日本男子初の頂点を狙う。

 目の肥えた中国ファンは対戦相手が得点する度に温かい歓声を送った。それだけ力量差があっても桃田は力を抜かない。序盤に鋭いスマッシュなどで7連続得点するとリードを保ち、41分で勝利。あっさりとした初戦突破でも「緊張したが、最後は自分らしく楽しみながらプレーできてよかった」と喜びがあふれた。

 銅メダルの15年大会以来3年ぶりの大舞台。試合後の行為に成長と余裕が表れていた。小さくガッツポーズをしてあいさつを済ませると、何かに気付き相手コートへ。自分が放ったウイニングショットの球を拾い、審判へと届けた。誰にアピールするわけでもない、ささやかなマナーだった。

 違法賭博による無期限の出場停止処分が解け実戦復帰した17年5月。勝てばいい、とだけ思っていた過去の自分の言動を振り返り、丁寧におじぎすることで有名な奥原希望の「コートでのふるまいを見習いたい」と口にした。処分期間中、所属先の会社で働き、各地で子供たちに教えて学んだのは、多くの人に支えられ、応援してもらって初めて競技ができていたこと。何でもない球拾いに、その心の成長が詰まっていた。

 中西コーチも、そんな桃田を「心も体も余裕があったのだと思います」と評した。この日はあえてギリギリのラインを狙うなどし、試合感覚を確かめた。「最後の最後、紙一重。それがインになるかアウトになるかで試合を左右する。そこをつかもうと思った」。見つめるのは、先に待つ強豪との激しい戦い。優勝候補として世界中のメディアから質問を受け「注目は期待の表れ。それを力に変えられるように」とうれしそうに話した。【高場泉穂】