【メルボルン=吉松忠弘】2連覇を狙う世界4位の大坂なおみ(22=日清食品)が怒りを力に変え、サービスエース0本のいらいらを乗りきった。

同42位の鄭賽賽(中国)戦の第2セットでラケットを投げたり、相手陣営をにらみつけたり大立ち回り。しかし、6-2、6-4のストレートで勝ち、3回戦では同67位で15歳の天才少女コリ・ガウフ(米国)と対戦する。19年全米3回戦では大坂がストレートで圧勝している。

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大坂の目がぎらりと光った。その先には、相手の陣営があった。第2セット第4ゲーム。3点目で、大坂がバックをネットした時だ。相手陣営から黄色い歓声が起きた。テニスでは、相手のミスに声援するのは少しマナー違反だ。いらいらが頂点に達した。

続く4点目を奪うと、一気に反撃だ。相手陣営に左手でガッツポーズを見せ「カモーン!」。してやったりの表情で、怒りを闘志に変えた。しかし試合後、冷静になれば「少し子どもっぽかったと思う。劇的なドラマはないから、もう思い出させないで」と反省しきりだ。

その前の第3ゲームで、自分のサービスゲームを落とした。ラケットを投げ捨て、ボールをたたきつけ、転がっていたラケットを蹴った。「魔法のように手からラケットが飛んでいった。ヨネックスさん、ごめんなさい」。昨年まで、よく見た光景だ。ただ、相手の応援にむき出しの感情を見せたのは珍しい。いらいらには理由がある。

「決まったと思ったら、相手は『まだ決まってません』と返球してくる。たまらない」。大坂最大の武器のサーブが、いい例だ。前哨戦ブリスベン国際で、自己最多の1試合18本のエースを決め絶好調だった。この日は0本。完全に押さえ込まれた。

相手はベースラインから約2メートルも下がり、時速約190キロのサーブに触り続けた。今大会も含め、大坂の4大大会本戦は全51試合。エース0本は、17年全米1回戦だけ。世界のトップになってからは初めてで、いらいらが募った。

日本テニス協会で大坂を担当する吉川真司女子代表コーチは、「2年前なら、第2セットは落としていた」と言う。今回は2-4から怒りを力に変え、「3セットはしたくなかった」と一気に4ゲーム連取でけりをつけた。

次戦は、19年全米3回戦の再現だ。ガウフの再挑戦を受けて立つ。試合後の会見では「今回、まだ彼女の試合をちゃんと見ていない。会見が終わったら、見に行くつもり」と、愛嬌(あいきょう)を振りまき、この日の大坂劇場に苦笑いしながら立ち去った。

◆WOWOW放送予定 23日午前8時50分から。同午後4時45分から。ともにWOWOWライブ。男女シングルス2回戦ほか。生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。