12年ロンドン五輪柔道男子73キロ級銀メダルの中矢力(31=ALSOK)が17日、オンラインで引退会見を行った。

20年東京五輪を競技人生の節目と考え、現役生活に終止符を打つことを決めた。中矢は「年内いっぱいでの引退を決意しました。26年間たくさんの経験をし、ここまで成長できたのも、指導者の方々や家族の支え、声援があったからだと思います。本当にありがとうございました」とあいさつした。

心に残る思い出に五輪決勝を挙げた。「試合で記憶がなくなることはないが、決勝は頭が真っ白で自分の柔道ができなかったことを覚えている」と当時を思い返した。

愛媛県出身。愛媛・新田高から東海大に進学し、“寝業師”として多くの白星を重ねた。2度の世界王者に輝いたが、16年リオデジャネイロ五輪は大野将平(旭化成)との代表争いに敗れた。その後、筋力増による10キロ超の減量苦のため81キロ級に階級を変更。「戦い方や強さが違う」と実感し、目立った実績を残せなかった。

引退するラストイヤーは、これまでの「73キロ級で勝負する」と決めて鍛錬した。しかし、コロナ禍の影響で大会は軒並み中止に。結局、今年は1試合もすることなく、競技人生を終えることになった。

来年1月からALSOKのコーチに就任する。チームには東京五輪男子90キロ級代表の向翔一郎らがいる。31歳の柔道家は「あと半年でいかに五輪で勝つ選手にするか。(五輪経験者として)助言できればと思う。教え子には、自分が成し遂げられなかった五輪金メダルを取ってもらいたい」と新たな目標を掲げた。