今季限りでの現役引退を決めている日野龍樹(25=愛知)が全国大会規模での引退試合を終えた。ショートプログラム(SP)6位からフリーは124・52点、合計185・70点の3位とし、表彰台に上がった。3月の愛知県大会を残しているが、「全国的な引退」と本人が期した演技。冒頭には果敢に4回転トーループにも挑んだ。転倒はあったが、映画「トルーマンショー」の曲の調べに、静かに、優雅に踊りきった。

演技前には同じ愛知県代表で後輩の山本草太などとタッチをしてリンクへ。演技後には見守った多くの選手からねぎらいの拍手が送られた。

以下は演技後の一問一答

-演技を終えて

日野 1つずつの動きとか、けっこう気を付けながらいいプログラムを滑ろうと思ってやったので、終わった時はすごく達成感みたいなものはありました。慣れているリンクですし、何回も滑っているので、特別国体という感じはなく、平常心だったかもしれません。

年々、こう、試合に出ることで、恥をかくのが怖くなってくる。引退を決めた理由もそれが入ってますし、本当に何もできないんじゃないかなという気持ちで、いつも試合に臨むんです。6分間の最初とか、回転も全然しないし、ちょっと例に出して申し訳ないですけど、昨日の草太みたいな演技を見ても、全然僕もあんな感じになる可能性があると。練習ではもっと僕もひどい。ループは降りようねと(本田)ルーカスと話し合っていたので、なんとか降りられただけでもよかったという感じでした。

-全国的には最後の演技

日野 いつかは終わりがくるものですし、でも、その瞬間てどんな感じか体験しないとわからない。こっち側(メイン)におじぎした時に、選手たちが立ち上がって拍手してたり、こういう感じなんだなと。これってこの一瞬しか味わえない。次の選手がいるので、早く滑らせてあげたいという気持ちと、ごめんちょっとだけ味わわせてという、ちょうど間の気持ちでした。

-思い出の試合は

日野 みなさんと同じというか、1番認識しやすいのは同期で出られたNHK杯ですし。僕にとっては大学2年で出たインカレとこの間の全日本。インカレはちょうど4年生の先輩が男子も女子もいて。団体で男女ともに優勝して華を持たせようという1年だったので。個人でも国際試合とかで頑張ってましたが、本当にその1年はそれだけ考えてみんなで頑張っていたので、あれを超えられる試合はなかったです。

-仲間の存在とは

日野 僕は何度も助けられたので、逆につらい友達がいたら手を差し伸べますし、つらいときに一緒にいてくれた人を友達というと思うので、そういう意味では一生もの友達がたくさんできた。ある意味このスポーツの1番の長所かなと思う。

-山本草太の存在は

日野 彼はいまちょっと疲れているので、一緒にでてくれてありがとね、というくらい。落ち着きたいなと思っている時期。全日本まであんなに走り続けてきたので。体調とかけがではないが、精神的に疲れ切っているので、たくさん話聞いたり、したり。どうにか今日みたいな演技をしてくれる、彼の実力でいえばもっとできますけど、そうですね、絶対にまたいい演技ができるスケーターですし、人間としても礼儀もしっかりしてますし、これからも会いたいなと思います。

-フィギュアスケートとはどういったものか

日野 やっぱり中学高校の途中まではひたすら練習を続けるべきだと思う。スポーツと言いつつ、表現の要素が入ってくるので、そこを技術というよりスケートだけではなく、豊かな人間じゃないと出せない雰囲気があるので、その転換期とかに悩むと思いますし、小さい時からジャンプを跳べている子は、大人になってもその跳び方では難しくなる。たくさん悩むスポーツだと思う。あまり人に勧めることは簡単にはできない(笑い)。学校を休まないといけないときもありますし、人としても教養とか大事なはずですけど、スケートの成長を考えると学校休まないと。バランスが難しかったな。よくわからないスポーツのままです。

-得たものは

日野 試合では降りられなかったんですけど、4回転ジャンプを降りることができて、幸せだなと。あの感覚は、うん、どのスポーツでも、ない感覚なので。引退までにもう1回跳べればというくらい気持ちがいいものです。トリプルアクセルを降りた時にまず、1回雲の上に行く感じというか、味わった後に、4回転となると、テレビで見たジャンプを自分がやっているので、最初にみたテレビで見た中に自分が入っていけるような。自分という姿を上から見ているような。そのくらいふわっと浮いているその時ほど簡単でした。

-これからどんな人生を

日野 どんな人間か知りたいという理由でフィギュアから離れるんですけど、スケートでいろいろ犠牲にと(インタビュアーが)おっしゃってたんですけど、やってる側からすると、追っているより緩いスポーツでもある。そんなに大したことしていない。社会に出たら間違いなく打ちのめされると思う。大学をきちっとやりたい、専攻して勉強した子に比べると、社会ではストレスとか感じると。礼儀もそんなに厳しくないスポーツですし、怒られたときに先輩や友達に笑い話として提供して、どうにか乗り越えていこうと思います

-3月の大会は

日野 今回のエレメンツは置いておいて、演技的な部分は満足している。もうちょっとジャンプを決まったらいいですけど。プログラムは考え中です。過去の栄光にすがる可能性もありますね。