フィギュアスケート元世界女王の安藤美姫(25)が1日、テレビ朝日系「報道ステーション」のインタビューで、第1子となる女児を4月に出産したことを明かした。昨年10月に妊娠が分かり、競技生活との兼ね合いも考慮したが、出産を決めた。相手男性とは結婚はしていない。安藤は優勝した11年世界選手権の後に休養を宣言。昨年10月、ソチ五輪が控える今季限りでの引退を表明し、出産後の5月から本格的に練習を再開していた。

 安藤が母になっていた。テレビ朝日系「報道ステーション」の録画インタビューに濃紺のドレス姿で登場し、「1人の女性として生きたいというわがままな決断により、4月に赤ちゃんを無事出産しました。もう母になりました」と笑顔で告白した。

 妊娠が分かったのは昨年10月。ソチ五輪を目指して復帰を考えていた矢先だった。「自分は嫌だった。(赤ちゃんと)さよならしてしまうという答えが」。競技生活との両立で悩んだ時期、周囲に反対された時期もあったが、「この世に生を受けたので、自然と女性として、1人の女の人としての幸せを考えました」と産む決断をした。インタビュー中、話が進むと目から涙がこぼれた。

 出産したのは4月。予定日から遅れたが、元気な女の子を授かった。体重は3350グラム。相手男性は日本人の元フィギュア選手だが非公表で、まだ結婚はしていない。今後、状況が変われば報告することになりそうだ。

 11年世界選手権後に休養を宣言した。06年トリノ五輪から師弟関係にあったニコライ・モロゾフ氏とも、昨年までに関係を解消。再び競技者としてのモチベーションが生まれる日まで、リンクから遠ざかった。

 昨年10月、日刊スポーツの単独インタビューに答え、ソチ五輪が行われる今季限りでの引退を発表した。コーチ不在を理由にGP(グランプリ)シリーズの欠場を明かし、「コーチが決まらなかったことが大きい」と半年間の完全休養を明かしていた。当時は妊娠が分かり、出産するかどうかの判断をすべき時期だったと思われる。

 その後は11月のイベントに登場したが、おなかの大きさは目立っていなかった。出産後の4月17日にアイスショーの制作発表に登場した時も同様だった。5月には練習を再開し、6月1日のアイスショーで9カ月ぶりの滑りを披露。28~30日まで行われた「ドリーム・オン・アイス」では3回転サルコーも披露するなど、復帰へ一段一段と階段を上がっていることを証明した。

 今後の目標はソチ五輪出場のために必須となる、12月の全日本選手権(埼玉)に出ること。同大会の予選の関東選手権(10月11~14日、埼玉・川越スケートセンター)が復帰戦となることが濃厚だ。国際大会派遣条件となる日本連盟の強化指定選手は昨秋に辞退しているため、国内大会で結果を残し、強化指定を受けることも必要になる。

 フィギュアスケートで、出産後に五輪に出場した日本人女子選手はいない。これまでも数々の印象深い演技で見る人を引きつけてきた。先月末、アイスショーの場でこう話していた。「本当に自分らしく、スケーターとしての『安藤美姫』を表現したい」。自分だけしかできない輝き方を求め、最後の戦いへと踏み出していく。【阿部健吾】