<水泳世界選手権>◇第14日◇2日◇バルセロナ◇男子200メートル背泳ぎ決勝

 日本の背泳ぎエースが、まさかの失速。入江陵介(23=イトマン東進)が、男子200メートル背泳ぎで1分55秒07の4位に終わった。09、11年世界選手権、昨年のロンドン五輪と3大会連続銀メダルを獲得した種目で表彰台さえ逃した。4月の日本選手権100メートルで萩野公介(18)に敗れた失意から16年リオデジャネイロ五輪を目指して再起したが、再び大きな壁にぶち当たった。

 届かなかった。トップのロクテははるか先、メダル圏内は射程に入っていたはずだが、得意のはずのラスト50メートルで伸びなかった。世界大会のこの種目では、5位だった08年北京五輪以来4大会ぶりのメダルなし。「ただただ悔しい。すごく悲しい」。狙っていた金メダルはおろか、メダルにさえ届かず声を振り絞った。

 100メートルで銅、200メートルで銀に輝いたロンドン五輪後、心は揺れた。年明けの1月からはオーストラリアに2カ月半の短期留学したが、集中力は戻らず。逆に「水泳を心から好きと言えない」状況に陥った。不安定な気持ちで臨んだ4月の日本選手権。100メートルで18歳の萩野に負けた。「新しい選手が出てきて、自分はいなくてもいいんじゃないか」と、引退も考えた。

 踏みとどまったのは、自らを打ちのめした萩野の存在。18歳で北京五輪に出たかつての自分のような若手の突き上げ。「ここで立ち止まっている場合じゃない」と思い直すようになった。泳ぎ全体を一から見直す決意を固めた。5月には1週間、88年ソウル五輪で鈴木大地を金メダルに導いた日本代表の鈴木陽二コーチ(63)に指導を受けた。今まで泳ぎは世界一と言われながらスタートとターンには難があった。バサロキックを教わるとともに、基本の蹴伸びから取り組んだ。

 それでも、まだ力は戻っていなかった。「今まで金メダルを1度も取っていない。金をとらなきゃエースじゃない」と、あえて自分に重圧を掛けてレースに臨んだが、先月30日の100メートルは金狙いが裏目に出て4位。そして、この日も得意なはずの200メートルでメダルを逃した。涙ながらに「自分は真ん中に立てない人間なのかと思う。今後のことは、ゆっくりと考えたい」。引退をにおわす発言が出るほど、入江にとって大きすぎる「敗北」だった。【田口潤】