第88回選抜高校野球大会(16年3月20日開幕、甲子園)の21世紀枠の各地区候補9校が11日、日本高野連から発表され、四国は小豆島(香川)が選ばれた。部員17人で臨んだ今年の秋季県大会決勝で、明治神宮大会王者の高松商を破って初優勝。部員不足などの困難な状況をはね返しての快進撃を演じ、春夏通じて同島初の甲子園に前進した。選考委員会は来年1月29日に行われる。

 日本三大渓谷美、寒霞渓(かんかけい)から吹き下ろす、冷たい風にも負けはしない。部員17人が白球を追う小豆島町のグラウンドに午後3時、うれしい知らせが届いた。創部91年目の来春、小豆島から初の甲子園出場が現実味を帯びた。「来年選んでいただけたなら、選手主体で彼らが考え、生き生きと練習し一生懸命に取り組む姿を見ていただきたいです」。丸亀(香川)、慶大では早慶戦の満塁本塁打など二塁手で活躍した杉吉勇輝監督(32)の声も弾んだ。

 大石先生と12人の子どもたちの交流を描いた壺井栄の名作「二十四の瞳」。豊かに茂るオリーブ園…。島を語るものはつきない。部員全員が同島出身。3万人近い島民の野球への関心も高い。知らせを受けて駆けつけた同校OBの塩田幸雄町長(63)は「甲子園が決まれば応援で島が空っぽになってしまうかも。私も駆けつけますよ」と喜んだ。

 選手が考える野球を学んできた杉吉監督の下、17人も練習メニューから自身で考える主体性を身につけた。今夏大敗した高松商に今秋の県大会決勝でリベンジ。明治神宮王者に今秋公式戦で唯一、黒星をつけた学校になった。四国大会は初戦(2回戦)で土佐(高知)に3-4で惜敗した。

 ホームの練習試合は試合に出ていない部員が審判やボールボーイで走り回るが、植松裕貴捕手(2年)は「相手校では相手にお世話になることも多い。うちと試合してくれる学校には本当に感謝しています」と言う。試合会場にはフェリー移動が必須だが、移動時間はミーティングにあてる。工夫が秋の好成績の源だ。

 17年4月に土庄(とのしょう)と合併し小豆島中央として開校するため、小豆島で甲子園に臨める機会はあと3度。出場校発表の1月29日は、2年生8人は北海道への修学旅行最終日で、吉報は出発直前の空港か機内で待つことになる。杉吉監督は「次の大会に向けて力を蓄える。それが甲子園になるか、地方大会になるのか。とにかく自分の目標に向かって真摯(しんし)にこの冬の1日1日の練習に取り組もう」と呼びかけた。“三十四の瞳”が輝いていた。【堀まどか】

 ◆小豆島高校 1920年(大9)に小豆島高等女学校として発足。49年(昭24)から現校名。生徒数は291人(女子122人)で普通科のみ。野球部は25年創部。主なOBは元中日の村上義則投手、元巨人の鳥坂九十九(つくも)投手、大相撲の琴勇輝。香川県小豆郡小豆島町草壁本町57。岩沢正俊校長。

 ◆小豆島 瀬戸大橋と淡路島の間の瀬戸内海に浮かぶ島で、面積は169・86平方キロ。瀬戸内海では淡路島に次いで2番目、全国では19番目の広さになる。土庄町と小豆島町の2町からなり、人口は約3万人。名産はオリーブで、オイルや香水、シャンプーなどのオリーブ製品がある。島内の高校は小豆島と土庄の2校。土庄は09年と今春センバツで香川県の21世紀枠候補校に2度選ばれた。

 ◆島からの甲子園 外海離島からの甲子園出場は03年春の隠岐(島根・隠岐島)、大嶺祐太投手(現ロッテ)を擁して06年春夏に出場した八重山商工(沖縄・石垣島)、11年春の佐渡(新潟・佐渡島)、14年春の大島(鹿児島・奄美大島)の4校。他に本土から橋でつながった島では53年春優勝の洲本(兵庫・淡路島)、久賀の校名で2度出場した周防大島(山口・周防大島)の2校がある。21世紀枠の候補9校には過去6校が名を連ね、03年隠岐、11年佐渡、12年洲本、14年大島の4校が選出。06年徳之島(鹿児島)09年土庄(香川)は外れたが、3分の2の確率で選ばれている。

 ◆21世紀枠 01年導入。推薦校は原則、秋季都道府県大会ベスト16以上(参加128校以上はベスト32以上)から選出。練習環境のハンディ克服、地域貢献など野球以外の要素も加える。07年まで2校、08年から3校(記念大会の13年は4校)。東、西日本から1校ずつ、残り1校は地域限定せず。