新潟県勢で唯一残った日本文理(県1位)は長野商(長野2位)に延長10回、6-5でサヨナラ勝ちした。1回戦の富山第一戦の9回5点大逆転勝ちに続いて、厳しいゲームをものにした。4-1の楽勝ムードから一転、9回に4-5と逆転を許した。逆境をはね返して、その裏に1番・飯田涼太(2年)と4番・川村啓真(同)の二塁打2本で同点。10回1死満塁、寺杣(てらそま)直泰(同)が放った遊ゴロの併殺崩れの間に、三塁走者の堀内真森(まもり=同)がサヨナラのホームを踏んだ。22日の準決勝は高岡商(富山1位)と対戦する。

 勝利への熱い思いが、寺杣にヘッドスライディングを選択させた。5-5の10回1死満塁。遊撃へのゴロを打つと、ボールが遊-二-一と転送される前に、頭から一塁ベースに突っ込んだ。執念が実ってセーフ!

 その間、三塁走者の堀内が本塁を踏んでサヨナラ勝ちを決めた。1拍遅れてベンチからナインが、小躍りしながら飛び出してきた。

 「このチームは諦めない。最後まで」と大井道夫監督(75)は話した。7回までは4-1の快勝ペース。ところが、8回に2点を失い、9回は三塁手・寺杣の失策から始まり、2安打、2失策などで2点を与え逆転を許した。「自分のエラーでチームに迷惑をかけた。だから自分で決めるしかなかった」と、サヨナラ勝ちを演出した寺杣は、勝利への強い願望を明かした。

 土壇場の9回に4-5で逆転されたその裏、誰もが勝利を投げ出さなかった。二塁打の走者、飯田を置いて2死の場面で左中間への同点二塁打を放った川村は言う。「あんな時に打てる選手を目指してきた。自分が打たなければゲームは終わる。だけど冷静に、落ち着いて、当てるだけの打撃はやめようと思った」。崖っぷちに立たされても、4番打者は強い心を失わなかった。

 10回のシーンもそうだ。1死から2者連続四球で一、二塁。9回の同点劇の口火となる二塁打を打っていた次打者の飯田に、川村が耳打ちした。「上で勝っていくチームは、ここで打つ。精神状態も向こうが不利。強気でいけ」。そんな励まし通りに右前打を放ち満塁。サヨナラ劇のお膳立てをした。

 富山第一との1回戦は1-5とリードされながら8-5の逆転勝ち。長野商戦は9回に1度逆転を許しながら、延長10回サヨナラ勝ちを決めた。ミラクルの連続で準決勝に進出したが、失点にからむような失策が2試合で合計8個。「無駄なミスをなくすのが、改善点」と、川村は22日の高岡商戦までの課題を話した。【涌井幹雄】