異例の行動に、イチローへのリスペクトが込められていた。中日松坂大輔投手(38)が22日、同日未明に現役引退を表明したマリナーズ・イチロー外野手(45)への会見を予定していたが、直前に急きょ中止。コメントを発表した。

「イチローさん、28年間お疲れさまでした。イチローさんと何度も対峙(たいじ)できた事、オールスターや日の丸を背負い同じチームでプレーできた事、同じ空間で過ごし、いろいろな話ができた事、全てが特別な時間でした。プロ入り前からその姿を追いかけ、イチローさんがいたから今の僕が在ります。2試合とも観ていましたが試合中、試合後の姿を見て改めてイチローさんが特別な存在なんだ、と再認識しました。今は感謝の気持ちをとにかく伝えたいです。長い間、僕たちの目標で在り続けていただき、本当にありがとうございました! そしてこれからも僕の目標である事は変わりません! ただ、できる事ならばもう一度、イチローさんに投げたかったです…。これからは自分のペースでゆっくりされて体と心を休めて下さい。メールでも伝えましたがいろいろと話したい事、聞きたい事があるのでまた今度食事に連れて行って下さい! 」

熱い思いがあふれていた。当初はリハビリをするナゴヤ球場で会見を行う予定だった。午前9時に球場入りし、同10時30分にマスコミ各社での囲み取材に応じる姿勢を示した。テレビカメラ6台がセッティングされ、記者もスタンバイ。本人の登場を待つだけだった。しかし、「会見で中途半端なコメントは出せない。後でコメントとして流させて欲しい」と、球団広報を通じて会見の中止を連絡した。

2月の沖縄キャンプでファンと接触したことから右肩の炎症を起こし、キャンプを離脱。2月末からナゴヤ球場でリハビリを続ける。この日も、約40メートルのキャッチボールをして調整した。しかし、球場外でのリハビリも並行しているため、短時間の取材でイチローを語ることを控えた。

松坂にとってイチローの存在は大きかった。98年、ドラフト1位で西武に入団。ルーキーの99年5月16日のオリックス戦(西武)で初対決。5年連続首位打者だったイチローから3打席連続三振(1四球)を奪った。「プロでやる自信が、確信に変わった」と、試合後のインタビューで名言を残した。

その後、06、09年のWBCでは日の丸を背負い連覇を達成。メジャーでも、敵味方に分かれ、対戦した。球界をけん引してきた先駆者のイチロー。会見を取りやめコメント発表に代えたのは、平成最後の年に現役引退した先駆者へ、「平成の怪物」が見せたリスペクトだった。