阪神糸井嘉男外野手(37)が、引退を発表したマリナーズのイチロー外野手(45)に贈る惜別の19年1号をかっ飛ばした。4回にオリックス山岡から左翼へ豪快ソロ。かつて自主トレをともにし、「神様」と尊敬する同じ右翼手のレジェンドへの感謝をバットに乗せた。古傷の右膝炎症で調整が遅れたが、打率5割5分6厘と絶好調。イチロー魂を胸に、シーズンもチームを引っ張る。

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憧れのイチローにささげる一振りだった。4回先頭。フルスイングから放たれた糸井の19年1号は左翼方向へ。オリックス先発山岡の147キロ真っすぐを、力の限り押し込んだ。高く舞い上がった打球は、そのままスタンドへ。感触をかみしめるように、ゆったりとダイヤモンドを回った。

「自分の良いスイングをしようと心がけて、打席に入りました。良いピッチャーからしっかりと打つことができて良かったです」

右膝痛の影響もあり、今季の初実戦は16日の西武戦(甲子園)までズレ込んだ。ただ、オープン戦で打率5割5分6厘をマークするなど絶好調だ。前日のロッテ戦では阪神もドラフト1位指名した藤原のプレーに魅了され「ファンになった」。だが千葉から帰阪した深夜には、再び心揺さぶられることがあった。

「最後まで、全部見ました」。イチローの引退会見。画面にくぎ付けになって、1時間23分に及んだ最後の勇姿を見届けた。

「もちろん、寂しさはあります。僕が語れるようなことじゃないけど、ウルっときた。最後は全部会見を見させてもらって、グッとくるものもあった」

思い出は尽きない。日本ハムからオリックスに移籍した13年のオフのことだ。イチローから「練習を見に来いよ」と神戸の自主トレに誘われた。「何日か同じ空間で練習できた。僕にとって、野球選手としての神様です」。同じ右投げ左打ちの右翼手。憧れのレジェンドと一緒に汗を流した時間は宝もの。この日の1号は感謝の惜別アーチだった。

糸井の1発に矢野監督は「何の心配もない。任せるべき選手だと思う」と好調な木浪、近本の後を打つ3番に太鼓判を押した。糸井は「京セラ、イイネ!」と叫んで帰りの車に乗り込んだ。1週間後の29日、開幕ヤクルト戦も同じ舞台。予行演習はばっちりだ。イチロー魂を胸に、19年シーズンもチームを引っ張る覚悟だ。【真柴健】