引退表明から一夜明けたマリナーズ・イチロー外野手(45)が22日、成田空港発の航空機で渡米した。前夜に日米通算28年目でユニホームを脱ぐことを表明すると、日本政府が国民栄誉賞授与を検討するなど、日本全国がイチローの打ち立ててきた数々の偉業にあらためて感服した。

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中日松坂大輔投手(38)が22日、現役引退を表明したイチローへのコメントを発表した。

「イチローさん、28年間お疲れさまでした」で始まる文面には、先輩への思いが詰まっていた。「何度も対峙(たいじ)できた事、オールスターや日の丸を背負い同じチームでプレーできた事、同じ空間で過ごし、いろいろな話ができた事、全てが特別な時間でした。イチローさんがいたから今の僕が在ります」。ルーキーイヤーの99年5月に当時5年連続首位打者のイチローと対戦。3打席連続三振を奪い、「プロでやる自信が、確信に変わった」の名言を残した。06、09年のWBCでは、チームメートとして連覇を達成。メジャーでも敵味方に分かれ、戦った。

この日はリハビリ中のナゴヤ球場で会見を行う予定だった。しかし「会見で中途半端なコメントは出せない」と球団広報を通して会見を直前で中止した。約40メートルのキャッチボールなどに取り組むと、治療のため球場を離れた。リリースまで約7時間。時間をかけて、絞り出した文面だった。

「ただ、できる事ならばもう1度、イチローさんに投げたかったです…」。名残惜しそうに松坂は本音を漏らした。「平成の名勝負」はもう見られない。それでも松坂は1軍マウンドを目指し、汗を流し続ける。会見を取りやめコメント発表に切り替えた行動に、「平成の怪物」流のリスペクトがこもっていた。【伊東大介】