「すごく楽しかった」
先日、東北風土マラソンに参加してきた。宮城県登米市で3月25日に行われた。人生で初めてのハーフマラソンだった。
話のネタにもしているが、元々競泳選手だったので、水の中で過ごしてきた時間が多く、陸の人間ではなく、水の人間だった。引退して、スポーツを楽しむことに少しずつ慣れてきた。しかし、走る。しかも、21キロ弱。ちょっと心配だった。
この東北風土マラソンは、2011年3月11日の今も記憶に新しい東日本大震災後、「世界と東北をつなげたい!」という思いから始まり、今回で5回目だ。海外からの参加者を増やすことに大変尽力している。東北風土マラソンのモデルになった大会がフランスのメドックマラソン。赤ワインが有名なボルドー、メドック地方でぶどうの収穫直前の9月に毎年開催されるフルマラソンだ。約8500人のランナー、そして3万人がメドック地方に集まる、一大観光イベント。ワインももちろん振る舞われ、ワインと合う食事も充実している。
そんなモデルとなったメドックマラソンの要素が、東北風土マラソンには多く取り入れられている。
東北の食材と日本酒を世界中に向けて発信する「グローバル・ファンラン」を目指している。
スタート地点、ゴール地点には、地元のソウルフード、地酒のブースがあり、試飲もたくさんできる。走る前に試飲する勇気はなかったが。走らずにそのブースだけ楽しみにくるランナーのご家族の方も多くいた。
とにかく、お祭りの雰囲気。そんな雰囲気に自分の緊張感も少し和んで、楽しく走れるのではという自分に期待した気持ちになった。「なんかポジティブな空間だな」。そんなことを感じた。
一緒にランを楽しんだのは、ゴスペルシンガーのジョン・ルーカスさん。歌手の水越ユカさんだ。ジョンさんも時計を見ながら「このペースを守ろう」、「Nice Run!」と一緒に走るランナーにも声をかけた。水越ユカさんは、「シンガーソングランナー」として活躍している、フルマラソンも4時間1分で走る。ベテランだ。
参加者のみなさんと走っていると、あっという間に距離が過ぎていった。
普段は5キロから10キロを淡々と走る。これも、メンタル的はとても大切な作業だが、このようなスポーツイベントに参加する良さは、みんなと同じ空間を共有できること。
走りながら会話も弾んだ。
「マラソンは、その日で達成感が味わえる」
「日々は、目標に向かって1日1日コツコツやる」
水越ユカさんの言葉に納得した。
フィジカルとメンタルでどちらも達成感を味わえること。
マラソンにはまる人の気持ちが理解できた気がした。
このイベントを発案した実行委員のみなさんの気持ちが、参加者にも知らないうちに浸透して、参加したすべての人の心にまた参加したいという気持ちが残る。
復興という視点から、さらに人と人のつながりへ発展する。
素晴らしいマラソンイベントだなと感じた。
私も、またぜひ来年も参加したいと心から思った。
(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)