新年、あけましておめでとうございます。本年も皆様にとって幸多き1年となりますように。

2021年はどんな1年になるのだろうか。新型コロナウイルスや東京オリンピック・パラリンピックなど、今後の行方が気になる話題はいくつもある。しかし私は、マスクなしの笑顔あふれる世の中に戻ることを心から祈っている。


あけましておめでとうございます
あけましておめでとうございます

私事だが、昨年、娘が七五三を迎えた。初めて着るお着物や髪飾り。嫌がって不機嫌になるのではと数日前からずっと不安だった。しかし、そんな不安をよそに、着付けの時から「プリンセスみたいでかわいいね」と、とてもうれしそうに笑っていた。着付けが終わると「楽しかったね~」とまだまだこれからという時点で楽しむ余裕すら見せてくれた。

かかとに小さな鈴のついたおぞうりを履いて、転ばないように一生懸命歩く姿がなんとも愛らしく、今しかないこの瞬間を目に焼き付けようと、私たちも必死で娘の姿を追いかけた。お参りも、写真撮影も無事に終え、最後まで元気いっぱいに七五三を楽しんでくれた。


娘が七五三を迎えました
娘が七五三を迎えました

そんな娘が生まれたのは、3年前。世の中がお正月モードになり始めた頃だった。夜中に、数時間おきに腹部を締め付けるような波が起こった。そろそろかな?と思い、朝起きて病院に連絡すると「これは前駆陣痛と言われる現象で、本陣痛の練習のようなもの」ということだった(私の場合、ほとんど痛みは感じられなかった)。

しかし、午後になると少し痛みが出始めたため、急きょ受診することに。診察してもらうと、まだ子宮口は2センチ。きっと生まれるのは年明けになるだろうと告げられた。それならと、少し痛みはあったものの、仕事納めをして、私の実家へやってくる夫を車で駅まで迎えに行くことにした。

しかしその時、経験したことのない痛みを感じた。今思えば、すでに陣痛が始まっていたのだ。それでもなんとか駅に着き、夫に状況を説明していると、痛みは3分おきに。運転を交代し、病院へ直行した。時刻は午後8時半。まだ生まれないだろうと思っていたが、そのまま出産することになった。

検査をすると子宮口は5センチ。痛みは徐々に強くなってきていたがまだ耐えられた。長期戦に備え、おにぎりを食べながら夫と談笑する余裕もあった。そこから徐々に痛みが強くなり、耐えられないほどに。助産師の先生は慣れた口調で「破水したら呼んでください」と冷静に告げ、部屋を出て行った。

今まで、飛び込み選手として競技をする中で、さまざまな痛みに耐えてきたという自信があった。立てないほどの腰痛や肩の脱臼、高さ10メートルから真っ平で水に打ち付けられて、一瞬息が出来ない感覚。

しかし、その経験が全く生かされないほどの激痛の波だった。一刻も早くこの痛みから逃れたいと思い、「気合で破水するしかない」と本気で思った。破水するであろう膜に全集中して破水の事だけを考えて全力を出すと、ポワンと温かい感触があった。「破水だ!」とすぐに分かり分娩室へ。その後も元アスリートゆえに、今となっては笑えることがいろいろとあったが、午前0時過ぎに無事にわが子と対面することが出来た。病院に到着してから約4時間という超安産。それでも想像をはるかに超える壮絶な体験だった。


出産は十人十色。何が起こるかわからないし、1人1人にドラマがある。その後に続く子育てでも、予想できないこと、頭を悩ますことがたくさん待っている。

母にしてもらってようやくそのことに気づいた。「親の心子知らず」という言葉の意味も、今ならわかる。

2020年は1つの命の大切さを、今まで以上に考えさせられる年だった。

みんな誰かの大切な人。この先もそのことを常に考えていきたい。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)