昨年の世界選手権銀メダルのLS北見が第4戦で中部電力を9-5で退け、初の五輪出場を決めた。第1エンド(E)で3点を奪い序盤から試合を有利に進め、その後も好ショットを連発。通算3勝1敗とし、初の大舞台を引き寄せた。理想のカーリングを求め、10年8月に五輪2大会出場の本橋麻里(31)がチームを結成。数々の苦難を乗り越え、メダル候補として平昌に乗り込む。

 LS北見の本橋が、ゆっくりと4人に歩み寄った。勝利の瞬間は、コーチ席で試合のスコアなど事務的な処理を行っていた。すべてを終え、リンクに降りるまでは冷静を装ったが、4人の姿を見るともう感情は抑えられなかった。頼もしい後輩たちを力いっぱい抱きしめ「第1の目標がクリアできた。後輩にありがとうと言いたい」と泣いた。

 貫禄勝ちだった。第1Eで相手のミスを誘い3点を先取。1点を奪われた後の第4Eでは、スキップ藤沢が絶妙なドローショットを決め2点を追加した。その後も好ショットを連発。終わってみれば9-5の圧勝で初の五輪代表になった。

 「自分らしいカーリングを」と本橋が10年8月にゼロから立ち上げた。その約半年前に出場したバンクーバー五輪は8位に終わり、代表は「苦しいもの」だったが、金メダルを獲得したスウェーデンのスキップの発言が心に響いた。「仲間を信頼しているのでつらい時でも乗り越えられる。私たちに怖いものはない」。その言葉を指針に地元で理想を追った。

 選手の勧誘からコーチの招請、練習場所の確保などすべてを1人でこなした。周囲から「無理」と言われたことは1度や2度ではない。それでも思いを貫き通し、徐々に「仲間」が集まった。14年に吉田知、15年には藤沢が企業チームから加わった。現在、スポンサーは17社を数える。

 昨年2月の日本選手権で優勝、続く世界選手権で銀メダルを獲得したが、昨季は1度も勝てなかった。今季はベストを求め、リザーブに回った。自分が創設したチームであえて「控え」になったが「チームで話し合って決めた」と自己犠牲で後輩を支えた。

 初五輪は5カ月後に迫っている。今後は年末までの約3カ月で9大会に出場する。「もっとレベルを上げて本番に」。理想を体現した5人で今度は五輪のメダルを目指す。【松末守司】

 ◆本橋麻里(もとはし・まり)1986年(昭61)6月10日、北海道北見市(旧常呂町)生まれ。12歳で競技を始めた。05年にチーム青森に正式加入。06年トリノ五輪で7位、10年バンクーバー五輪で8位入賞。10年8月にロコ・ソラーレ北見を立ち上げ。12年5月に北海道出身の一般男性と結婚。15年10月に第1子を出産した。

 ◆LS北見 チーム青森で2度五輪出場した本橋麻里が、10年8月に創設。競技が盛んな北海道の旧常呂町(現北見市)が拠点。チーム名の「ロコ・ソラーレ」は、「太陽の常呂っ子」を意味する造語。