女子78キロ超級で世界女王の素根輝(そね・あきら、19=環太平洋大)が20年東京オリンピック(五輪)代表に決まった。柔道日本勢では、男女を通じて第1号となった。決勝で12年ロンドン五輪金メダルのイダリス・オルティス(キューバ)に延長の末、大内刈りで技ありを奪って初優勝。男子100キロ級は16年リオデジャネイロ五輪銅メダルの羽賀龍之介(旭化成)が4年ぶり2度目の優勝を飾った。

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19歳の世界女王が、夢舞台の切符を勝ち取った。決勝は、8月の世界選手権決勝と同じ相手。序盤はオルティスの奥襟をつかむ組み手に苦戦したが、持ち前の「攻める」姿勢を貫いた。前へ前へ-。延長1分53秒。体落としや足技で追い込みながら、最後は大内刈りで技ありを奪った。男女を通じて東京五輪代表第1号になった。「自分にプレッシャーをかけすぎず、1つの試合として臨んだ。最後は投げられて良かった。代表が決まるまでは落ち着かなかったけど、聞いてホッとした」。

4月には故郷の福岡県久留米市を離れ、岡山県の環太平洋大へ進学。母美香さんと稽古相手で柔道整復師の資格を持つ兄勝さんとともに引っ越した。一軒家を借りて2部屋をトレーニング室にして、実家から練習器具も持参。帰宅後、毎日午後11時過ぎまで勝さんと稽古に打ち込んだ。座右の銘の「3倍努力」を体現し、腕立て伏せ200回を就寝前の日課とした。

技の切れ味は78キロ超級で随一。身長162センチと上背はないが、下から突き上げる左手の釣り手を軸に、大柄な海外勢を揺さぶってきた。かつては、18年世界女王の朝比奈沙羅(23)らの大きい相手に押しつぶされ、持ち味が消されることが多かったが、小さい体を「武器」と言えるまで成長。92年バルセロナ五輪男子71キロ級金メダルで環太平洋大の古賀稔彦監督も「重量級だが、軽量級並みの柔道センスがある」と評価した。

5連勝中の朝比奈との直接対決はこの日、実現しなかったが、今大会銅メダルの朝比奈を上回る内容と結果で五輪代表を決めた。しかし、夢をかなえるまで慢心はない。「ここで終わりじゃない。支えてくれた方のためにも、東京五輪で絶対に金メダルを取る。勝負はここから」。九州で“無敵女子”と呼ばれた19歳の柔道家が、夢舞台に挑む。【峯岸佑樹】