フィギュアスケート男子の冬季五輪2連覇王者で、先月プロ転向を表明した羽生結弦さん(27)が10日、拠点のアイスリンク仙台で公開練習イベント「SharePractice」を敢行した。新たなステージに進んで初の演技。代名詞「SEIMEI」披露やクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)挑戦、計3時間に及んだ異例の取材対応で魅力を発信した。7日に開設した公式YouTubeチャンネルで初のライブ配信も行い、最大10万人の生視聴者とも共有した。

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先月19日のプロ転向表明から約3週間、早くも羽生さんが動きだした。練習公開を4季ぶりに再開。「ホープ&レガシー」では4回転ループ-3回転トーループを華麗に降りた。世界を見渡しても、今この2連続ジャンプを跳べる選手はいない。夢の4回転半も試みた。両足だったが転倒せずに着氷した。衰えはない。「より高みを目指すためのプロ転向」との決意を、高難度技の連発で証明した。

「なかなか練習の泥臭さや4回転半を見せる機会がない。これからプロとして活動していくに当たり、アスリートとして自分の根本にある、さらに追求する姿を見ていただきたかった」

さらに健在を示した演目が、平昌五輪でアジア初の2連覇を遂げたフリー曲「SEIMEI」だった。練習の終盤に曲かけ。1度目は4本目、2度目は5本目のジャンプで失敗すると、疲労も忘れ最初からやり直した。3度目で8本全て成功。「五輪と同じ構成をノーミスすることが今日の目標だった。当時はミスも出た。あの時よりもうまいんだと証明したい意志を込めた」。

その姿を、初配信で10万人の生視聴者と共有した。「シェアプラクティスは造語。皆さんと共有し、イベントでありつつ一緒に戦い抜くという姿を見ていただきたかった」。寄せられたリクエストにも応えようとする新たな一面も見せた。

練習後は20分超の合同取材。その後「地獄のインタビュー」と形容した個別取材に入った。25社が5分ずつ、転換も含めれば2時間半を超える異例の試み。自分で望んだ。「これまで個別を受けることができなかったので無理やり、やらせてくださいと。媒体各社さんの羽生結弦を書いていただけたら」と神対応した。

今後の輪郭も色濃くなってきた。「年内はメドが立った。これやりたい、あれやりたい、が決まってきて練習もしている。ただ、あらためて告知させていただきたいので内緒です」と笑った。4回転半も「できればプログラムの中で」と期待させた。北京五輪フリーの2月10日から、ちょうど半年。故郷仙台から第2章を滑り出した。【木下淳】