ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会開幕まで、9月8日でちょうど1年となった。

自国開催だった19年W杯は日本代表が過去最高の8強入り。NO8姫野和樹(28=トヨタヴェルブリッツ)は、その中心で躍動した1人だ。

ボール争奪戦での「ジャッカル」が代名詞となり、同年の新語・流行語大賞にノミネート。春は故障で代表を離れ、今月復帰したFWの核が日刊スポーツのインタビューに応じ、W杯での目標を優勝と言い切った。【取材・構成=松本航】

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姫野の表情は充実感に満ちあふれていた。W杯まで1年。きっぱりと言った。

「『いよいよだな』っていうのが一番です。前回は初めてのW杯で不安もあった。今回は人としても、選手としても、成長を実感する。前回よりも自分に対する期待感が強いです」

4月30日、リーグワンのリコーブラックラムズ東京戦で左太ももを負傷。7月の世界ランク2位フランス2連戦など代表から離れたが、今月、秋の代表候補に復帰を果たした。この間、悲観することはなかった。

「テーマは肉体改造とリフレッシュ。(フッカー堀江翔太のトレーナーで知られる)佐藤義人先生のところで考え方や、筋肉がどう体を動かしているのかを見つめ直しました。17年から代表に行って、ほぼ休みなく、ここまで来た。精神もすり減っていて、体もしんどかった。ケガをネガティブに捉えず、神様の導きと思って過ごしました」

3年前のW杯日本大会は、準々決勝までの全5試合に先発した。ボール争奪戦での存在感でラグビー用語「ジャッカル」が世間に浸透。同年の新語・流行語大賞にもノミネートされた。

「そういう風に記憶に残るのはいいことだと思う。ジャッカルは、得意なので。戸惑わなかったし、率直にうれしかったです」

「世界一のバックロー(FW第3列)」を目指す思いが強くなった。貪欲に成長を求め、21年は世界最高峰スーパーラグビーのハイランダーズ(ニュージーランド=NZ)で1季を過ごした。同国5チームのリーグ戦で新人賞を獲得した。

「NZの大きな選手に対し、どれだけできるか。スキルを学び、自信がつきました。防御時の脚や肩の使い方…。コーチが毎日、居残りで向き合ってくれた。防御面で課題があったけれど、NZに行って『オールマイティーな選手になれる』と感じられました」

主戦場のFW第3列。姫野が不在だった今年7月のフランス2連戦はリーチ、ガンター、タタフ、マキシ、コーネルセンと外国出身選手が担った。この3年の上積みが生きると信じる。

「そこで頑張るのが僕の責任。日本人が活躍したいという思いは少なからずある。強みの運動量と質を高めることが大事だと思います。他の選手よりも全ての局面でオールマイティーにプレーできるのは自分。パス、スキル、運動量、力…。そこで勝負をしたい」

今秋はNZ、イングランド、フランスとテストマッチを戦う。その先に見えるのが1年後のW杯となる。

「もちろん目標は優勝することですね。前回ベスト8を達成して、次の目標設定はすごく大事。目標は高く、かつ、実現可能なものにするべき。優勝するために何が必要かを考え、スタンダードを上げたい」

W杯1次リーグから同組にイングランド、アルゼンチン。強豪への挑戦が続くが必要な物は明確という。

「1年間でチームの成熟度を上げる。日本はスキルとスピードで、フィジカルの強い相手に対しても、いいラグビーができる。逆にあっちの土俵ではしんどい部分がある。春は19年代表組の離脱がすごく多くて、新しい選手がチャンスを得ていました。チームとしてのコネクション(つながり)はまだまだ。この1年でしっかりと密な時間を過ごして『ワンチーム』として乗り込んでいきたい」

求められる任務も変わるが、覚悟は決まっている。

「前回よりも強いリーダーシップを発揮し、チーム全体を引っ張りたい。僕はリスペクト、ノーサイド、自己犠牲…といった、ラグビーの文化が好きです。その文化は日本人的な良さ、素晴らしさに似ている部分がある。だから19年大会で、あれだけ日本人の心に刺さった。それ以上の感動を来年、感じてもらえるようにしたいです」

 

◆姫野和樹(ひめの・かずき)1994年(平6)7月27日、名古屋市生まれ。愛知・春日丘(現中部大春日丘)1、2年時に花園出場。帝京大で大学選手権8連覇などに貢献。17年にトヨタ自動車(現トヨタ)に加入し、1年目から主将。17年11月のオーストラリア戦で日本代表デビューし、現在22キャップ。21年はNZのハイランダーズに所属。187センチ、108キロ。