日中国交正常化50周年記念慶典の式典が29日、東京オペラシティで開催され、フィギュアスケート男子の冬季オリンピック(五輪)2連覇王者、羽生結弦さん(27)が特別出演した。

7月のプロ転向表明後、公式のイベントに登場するのは初めて。集合写真の記念撮影には濃紺のスーツに赤のネクタイ姿で参加。式典では二胡奏者のチャン・ヒナとともに登壇した。

「皆さん、こんにちは。タージャーハオ(大家好=同義)。羽生結弦です。本日は、日本と中国の国交が正常化した記念すべき日です。僕は仙台から来たんですが、このような式典に参加できて、本当にうれしく思っています」

「今年の2月、僕は北京オリンピックに出場するために北京へ行きました。そこで中国の方々の親しみやすさと温かさに触れてきました。とても感動しましたし、皆さんの応援の力に背中を押していただきました」

「日本と中国は隣り合っているからこそ、もっともっと、いい関係でありたいですよね。もっともっといい関係になれるように、これからも僕も、役に立ちたいなというふうに思いました」

「今年の7月、僕はプロフィギュアスケーターになることを宣言しました。え~。えっと(スピーチ内容を忘れて、ヒナに笑顔で確認して大きな拍手を浴びながら)これからも、現役として4回転半ジャンプも含めて挑戦していきますし、日本と中国の方々にも、最高の演技を届けられるようにしていけたらなと思っています。そして日本と中国が、より、お互いが理解し合って、より交流が増えるきっかけになれたらいいなと思っています」

中国語も「ちょっとだけ覚えたのでしゃべってみます」と披露し「今、私は27歳でヒナさんは24歳。足すと51です」と話して拍手を浴びた。

再び日本語に戻し「あと5時間ほどで(日中国交正常化)51年目の初日を迎えます。これからの50年も、ともに力を合わせて頑張っていきましょう。明日のために、未来のために、私たちのために、そして私たちの次の世代のために一緒に頑張っていきましょう」と呼びかけた。

冒頭に客席から花束をくれた中国の7歳の少女と、満面の笑みで記念撮影する場面もあった。最後は「頑張りましょう! ジャーヨー(加油=同義)」と声を張り上げ、壇上でクルッと1回転して、ポーズを取って、舞台袖へ引き揚げた。

組織委員会は羽生さんに「両国の若い世代共通の未来と希望のシンボル」として活躍してもらうことを期待。蒋暁松実行委員長もの起用理由について「中国でも日本でもたくさんの方に愛され、数々の困難を乗り越えてきた経験から模範としても愛されている」と説明していた。羽生さんへの打診は4月ごろ行い、出演交渉を進めてきたという。

「9月29日」は1972年(昭47)に田中角栄、周恩来の両国首相が日中共同声明に署名した日。50年の節目を迎え、政財界を代表する第一人者が一堂に会した記念レセプションや茶話会も行われた。【木下淳】