世界ランク2位の小田凱人(ときと、東海理化)が4大大会を初制覇した。世界ランキング1位のアルフィー・ヒューエット(25=英国)を6-1、6-4のストレートで撃破。17歳33日での4大大会優勝は、男子シングルスで最年少記録となった。女子は上地結衣がデフロート(オランダ)にストレート負けで3年ぶり5度目の優勝を逃した。上地はダブルス決勝でモンジャニ(南アフリカ)と組み、デフロートとアルゼンチン選手のペアを6-2、6-3で破り、6年ぶり4度目の優勝を果たした。

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圧倒的な強さで制すと、小田のほおを涙が伝った。ユニホームで拭い、晴れやかな顔でマイクを握った。流ちょうな英語でヒューエットへの感謝を伝え、日本語では実感を込めた。「皆さんのパワーのおかげで勝てました。来年もお会いしましょう!」。国枝さんに代わる日本の新エース誕生を名実ともに印象づけた。

持ち前の攻撃的なショットで攻めた。サーブを両コーナーへコントロール。今大会の計4戦で落としたのはわずか1セットと、試合巧者ぶりも光った。世界ランク1位のヒューエットにはここまで3連敗中だったが「絶対にできる」と自らを鼓舞。1月の全豪オープン決勝でストレート負けした強敵にリベンジした。4大大会初制覇を史上最年少の17歳33日で飾り、「夢がかなった」とかみしめた。

今年1月に“後継者”として覚悟が固まった。現役引退した国枝さんから、発表前に電話で激励を受けた。「これからの車いすテニスを引っ張ってくれ」。

サッカー少年だった9歳の頃、左股関節に骨肉腫を発症し、車いす生活に。闘病中、12年ロンドン・パラリンピックで国枝さんが金メダルに輝いた当時の映像に刺激を受け、10歳で競技を始めた。憧れの存在からの言葉は重く響いたが、「誰もが(後継者と)言ってもらえるわけではない。ビッグな選手になりたい」。4大大会全てを制し、パラリンピックで4個の金メダルを獲得したレジェンド超えへ。その1歩目を刻んだ。

全仏は昨年、4大大会デビューした大会。自身の名前の由来となった凱旋(がいせん)門があるパリで、来年に同じ会場で実施されるパリ・パラリンピックにも弾みをつけた。史上最年少での世界ランク1位浮上も確定させ、視線は未来へ向いている。「これからは、どれだけ長く世界一にいれるのかの勝負になる」。小田の物語は、まだ始まったばかりだ。【藤塚大輔】

◆放送 全仏オープンテニスはWOWOWで連日生放送。WOWOWオンデマンドでは日本人選手の試合が全試合ライブ配信される。