男子W杯バレーが30日に東京・代々木第1体育館で幕を開ける。パリ五輪予選として開催される今大会。7月まで行われたネーションズリーグ(VNL)で銅メダルを獲得した日本代表(世界ランキング5位)は、開幕戦でフィンランド(同28位)と対する。女子代表が惜しくも逃した五輪本番前年の出場権獲得へ-。そのキーマンを「龍神の爪」と題して紹介する。

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アウトサイドヒッター高橋藍(22=モンツァ)は、VNLで「世界で戦えることが証明できた」と胸を張る。得点数はエース石川祐希に次ぐチーム2位の198。サーブレシーブ以外のレシーブを指すディグ部門では全体1位だったリベロ山本智大に次いでチーム2位の96本をマーク。攻守の要として、銅メダル獲得に大きく貢献した。

京都・東山高3年時に全国制覇。18歳で日本代表に初選出された。20年に日体大に進学し、21年東京五輪を経て、同大に在籍しながら世界最高峰のイタリアリーグに移籍。研さんを重ねている。華々しい経歴に加え、端正なルックスと自信あふれる立ち居振る舞い。海外ファンからも人気を誇るが、数年前までは「自信なんて元々なかった。高校生の頃も全然なかったし、自分が代表で戦える選手になるなんて思わなかった」と振り返る。

大学1年の時に見た米国ドラマ「プリズン・ブレイク」が、1つの契機になった。無実の罪で死刑判決を受けた兄を救うために奔走する主人公の姿に「信念を貫き通すところが好きで。自分を信じることが本当に必要なんだなと。ドラマですけど、変わるきっかけになりましたね」という。

変わると決め、まずは「自分は世界で戦うのが当たり前の選手なんだ」と“自己暗示”をかけた。次第に心に余裕が生まれ、大舞台でも萎縮せず自分のプレーを発揮できるようになった。イタリアでのここまでの2年間も糧になり、「自分はやれるんだ」と揺るがないシンが1本通った。

名前の由来は藍色。「素直な明るさや自立の意味を込めてくれた。まさにその通りに生きていけてるのかなって」。確かな自信を胸に、大一番で光り輝く。【勝部晃多】

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