<陸上:日本選手権>◇初日◇25日◇広島広域公園陸上競技場

 世界選手権(8月、ベルリン)女子マラソン代表の赤羽有紀子(29=ホクレン)が、1万メートルで初優勝を果たした。練習の一環として出場し、31分57秒44の好タイムをマークして2年ぶり7度目の優勝を狙った福士加代子(ワコール)らを抑えた。スピードもあることを証明したママさんランナーは、世界選手権へ向けて大きく弾みをつけた。

 ママは日本一になった。赤羽は栃木の実家で留守番中の長女優苗ちゃん(2)に向けて「ママ、1番だよ、やったよ~」と、テレビカメラを通じて呼びかけた。前夜、電話で話した時は「もみじまんじゅう買ってきて」とねだられたが、どこにも売ってない日本選手権の金メダルも、おみやげになった。

 世界選手権を見据え、スピード強化のために出場した。レース途中は5000~8000メートルにかけて先頭集団を引っ張った。最後の1周は、佐伯とのマッチレース。残り200メートルで仕掛け、スプリント勝負を制した。この試合に照準を合わせ、1万メートル代表の座を狙った選手を退けた。内容も記録も盤石の結果だった。

 「ラスト勝負は負けない自信がありました。去年は(1万メートルも5000メートルも)2位だったので、日本選手権は勝ちたかったんです」。夫の周平コーチは「1人で練習しているので、どこかで競り合いをしないと、追い込めないと思っていた。スピードを維持できたことを確認できました」と合格点を与えた。

 出産後に強くなった赤羽夫妻にとって、競技を続けながら、訴えたいテーマがある。多くの若い女性ランナーが無月経になるほど体に負担を掛けている事実を知り、夫妻は公の場でも月経があることを隠さない。この日も体調が悪い日だったが、勝った。赤羽は「女性としてしっかりして(若い選手にも)競技を続けてほしいと思います」と話した。

 27日には5000メートルに出場し、国内で世界選手権への準備を続ける。夫、娘、そして夫婦の両親もが一丸となって迎える世界舞台。選手、母、そして女性として、強さがじわり、増してきた。【佐々木一郎】