<箱根駅伝連載

 戦国駅伝:(1)エース編>

 新春を彩る東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)は来年1月2、3日に行われる。日刊スポーツでは「戦国駅伝」と題し、テーマごとに6回に分け、箱根の話題を紹介する。第1回は「エース」編。早大は25日、埼玉・所沢キャンパスで練習を公開し、渡辺康幸監督(39)が大迫傑(すぐる、3年)の米国留学計画を明かした。学生界のエースに成長した男は、世界挑戦を前に、早大を2季ぶりの総合優勝に導く。

 大迫と渡辺監督の悲願が、少しずつ現実となっている。4年となる来季、米国への武者修行を重ね、卒業後は米国西海岸の陸上クラブに拠点を移す計画を持っている。大迫は「本場の舞台で挑戦してみたい」と興奮を隠せない。渡辺監督は「門前払いを食うかもしれない」と言いつつも、口癖は「箱根を走る学生から五輪代表を出す」だ。2人にとって、箱根は世界へとつながっている。

 箱根にデビューした時から、大迫は「箱根は世界への通過点」と言ってはばからない。その気持ちは今も変わらない。しかし「以前より、箱根の必要性を感じている。成長させてくれる場所」とエースの責任は増した。転機は6月の日本選手権。1万メートルでわずか0秒38の差で2位に終わり、五輪代表を逃した。拳をたたきつけ、悔しさを爆発させた。その時から「本当に練習をするようになった」(渡辺監督)。クールな大迫ががむしゃらになった。

 1区からは卒業する。「違った区間を走りたい。逃げるより追う駅伝をしたい」。希望はエース区間の2区か3区だ。2区なら最後のアップダウンがある3キロで勝負をかける。3区なら、先輩の竹沢が昨年コスマスに抜かれた区間新を早大に取り戻す。

 来年度の駅伝主将も決まり、卒業後の進路も日清食品に内定。「自由にやらせてもらえるところ」が決め手という。まずは、昨季は無冠に終わった早大を「自分の力で優勝に導く」こと。その先に世界への道が広がっている。【吉松忠弘】