<ゴールドコースト・マラソン>◇7日◇オーストラリア・ゴールドコースト

 これでモスクワもお任せ!

 25度目のマラソンとなった公務員ランナー川内優輝(26=埼玉県庁)が“疑似世界陸上”を制した。35キロ付近でエチオピアの選手に8秒差をつけられたが「負けてたまるか」の反骨心で逆転。2時間10分1秒の大会タイ記録で、節目のマラソン通算10勝目をマークした。最近3連勝で、この1年では11戦9勝。8月10日開幕の世界選手権モスクワ大会に弾みをつけた。

 約1カ月後に控えた世界選手権前、最後のフルマラソン。孤高の雑草魂が、ここ一番で爆発した。先頭集団で様子をうかがっていた30キロすぎ。川内と同じ2時間8分台の自己ベストを持つエチオピア選手が、ペースを上げた。35キロ付近で、その差は8秒(約40メートル)。「結構速い」と焦りもあったが、逆に闘争心に火が付いた。「彼が(世界選手権の)入賞ラインの選手だと思って、負けてたまるかと追い掛けた」。

 ただし、頭の中の読みは冷静さを失わない。過去5度の海外レースの経験が生かされたのは、その後だ。「中途半端に追い付いて並走すると、息を吹き返してくる」。じりじりと差を詰めてから一気のスパートで抜き去った。「日本人選手でも、アフリカ勢やオーストラリアのランナーに勝てることを証明できた」。日の丸を体に巻き、喜色満面の川内だった。

 昨年の今大会は、2時間13分26秒の4位。「世界選手権の前哨戦」と位置づけて臨んだレースでリベンジを果たした。高低差8メートルのフラットなコース。午前7時20分のスタート時の気温は10度前後で、湿度も40%ほど。海岸線の一般道を南北に走るコースだが、風もほぼ無風。出発前には、大会記録の更新と2時間10分切りの「サブテン」での優勝を目標に掲げた。ともに1秒、2秒差で逃したが「優勝という目標が達成できた。世界陸上に向けて弾みがついた。また、ゴールドコーストに戻ってきたい」と気勢を上げた。昨年9月のシドニーマラソンを制し、今年10月のメルボルンマラソン出場も決定。「3大マラソンを制覇すればオーストラリアで自分の名前が知れ渡る」という“川内有名化計画”にも王手をかけた。

 6月の週末は主に、埼玉・秩父や栃木・日光で険しい山道を走破するトレイルランで鍛えた。日光・男体山の頂上では、待ち構えていた写真週刊誌の取材陣に「記者魂を感じますね」とオープンな性格も持ち合わせる。大舞台に向けた緻密な計画と、レース出場を練習の場に置き換えた独自の信念を貫く川内。夜には現地をたち、今日8日早朝の成田到着後は、勤務する埼玉・春日部高に直行する。誰にも止められない「川内流」で、モスクワまで突き進む。<川内のマラソン最近1年間の11戦9勝>12年8月26日

 北海道(1位)2時間18分38秒同9月16日

 シドニー(1位)2時間11分52秒同10月21日

 ちばアクアマリン(1位)2時間17分48秒同12月2日

 福岡国際(6位)2時間10分29秒同12月16日

 防府(1位)2時間10分46秒13年1月18日

 エジプト(1位)2時間12分24秒同2月3日

 別府大分(1位)2時間8分15秒同3月17日

 ソウル国際(4位)2時間8分14秒同4月21日

 長野(1位)2時間14分27秒同6月2日

 千歳JAL国際(1位)2時間18分29秒同7月7日

 ゴールドコースト(1位)2時間10分1秒