<陸上世界選手権>◇第2日◇11日◇モスクワ◇男子20キロ競歩

 男子20キロ競歩で昨年ロンドン五輪代表の西塔(さいとう)拓己(20=東洋大)が、初出場の世界選手権で6位入賞を果たした。スタートから先頭を引っ張り、10キロ手前で後方集団に吸収されたが、粘り強く前を追ってゴール。日本競歩界での6位フィニッシュは過去最高位タイ。20歳のホープが、16年リオ五輪の星として名乗りを上げた。また、

 託された。15キロ過ぎ、西塔が失速した日本記録保持者の鈴木を追い抜く時だった。5歳上の先輩からポンと背中をたたかれた。「一緒に戦っている。心が折れそうだったけど、もう1度心を奮い立たせた」。

 競歩代表は、団結力が持ち味だ。代表合宿では炊飯器やお米を持ち寄って、テーブルを囲む。男子マラソン川内が「仲がよくてうらやましい。競歩の人たちと一緒に合宿したい」というほどだ。そんなチームの強さを、世界舞台でも発揮。西塔は先頭集団を追い、バンザイしてゴールに入った。

 リオの星だ。昨年のロンドン五輪に競歩史上最年少の19歳で出場して25位。「何もできなかった」。外国選手のフォームを研究して、筋力を鍛えた。初出場の世界選手権で堂々の6位入賞。上位選手が失格する中、一時は4位につけて「もしかしておれ(メダルに)いけるんじゃないか」。最後はスタジアム近くから2人に抜かれ「悔しい」と言ったが、まだまだ成長できる可能性を見せた。

 同じ広島出身の男子100メートルの山県と高校時代からの友達だ。この日朝、予選敗退して左太もも裏肉離れになった山県から「頑張ってくれ」と励まされた。「ホテルで偶然会って。力をもらいました」と西塔。6位入場を励みにして、リオ五輪に向けて飛び出す。

 ◆西塔拓己(さいとう・たくみ)1993年(平5)3月23日、広島県江田島市出身。広島商3年時に日本ユース、高校総体、国体の3冠達成。東洋大に進み12年2月の日本選手権20キロではジュニア歴代2位、7月には世界ジュニア4位。8月には競歩史上最年少の19歳でロンドン五輪に出場して25位。今年の日本選手権は鈴木に敗れるも1時間20分5秒の学生最高で2位に入る。178センチ、59キロ。